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日本ラグビーが世界に及ぼした甚大な衝撃 12年前と境遇が酷似、夏のV字回復&赤竜狩りへ「奇襲攻撃をかける」――エディーHC単独インタビュー

選手たちの練習を見守るエディーHC(左から3人目)【写真:吉田宏】
選手たちの練習を見守るエディーHC(左から3人目)【写真:吉田宏】

進化すべきポイントの一つはスクラム 宮崎合宿で「シバ」の声を掛け合い意識づけ

 昨シーズンの日本代表の戦いぶりから考えると、進化するべきポイントとしてこのブレークダウンに加えてディフェンス、そしてスクラム等セットピースが挙げられるが、エディーはこう指摘する。

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「そうですね。セットピース、特にスクラムについては、やはり経験が物を言うエリアです。昨季イングランドと2試合をして、相手に賢さで上回られた。そこはもう経験値を上げていくしかない。ディフェンスで求めているのは、先ずインサイドからのプレッシャー。それが出来ると、外側の防御を上げることが出来るようになる。最初の3歩を思い切り前に出るのがこだわるところです」

 実際にスクラムでは、宮崎合宿前に長野・菅平で行われた若手主体の15人制トレーニングスコッド合宿でも従来以上に低く沈み込むような低さに取り組んできた。スクラムを組みながら、そしてFWでハドルを組んだ時も、各々が「シバ(芝)」という声を掛け合い、スクラムを組んだときに膝がグラウンドの芝生に着くような意識づけを徹底してきた。

「今はかなり手応えを感じています。ウェールズ戦でもいいスクラムが組めると思う。試合では、レフェリーの判断も含めて難しいパートではありますが、真っ直ぐに組み合うようなスクラムになれば勝てると考えています。ウェールズは左PRが前に出てくるが、状況で右にずらしてくる組み方もしてくる。そこを先ずしっかり見極める賢さが大事になるでしょうね」

 昨季は経験値の浅い若手主体ということも響いて、左右に揺さぶりを掛けられると脆さを見せたのが日本のスクラムだった。

「その通りですね。HOに原田衛(BL東京)が代表に入ってきて、PRでも為房慶次朗(S東京ベイ)らが代表1シーズン目でしたが、今年は更に成熟している。ゲームでフィールドの上にはコーチはいないので、私たちの仕事は、練習で様々なシチュエーション、つまりスクラムがどうなっていくかを経験させることが大事になる。ウェールズ戦では、指摘された揺さぶられる状況でも上手くハンドリング出来ると思います」

 防御に関しては、宮崎でも新たな“傾向”が見えてきた。アタック&ディフェンスという攻守に分かれた実戦形式のメニューでは、従来より積極的に防御が前に出て攻撃側にプレッシャーをかけるライン防御に取り組んでいる。昨季のデイビッド・キッドウェル・コーチが退任したことで防御担当は空位のままだが、今合宿には元コベルコ神戸スティーラーズHCのギャリー・ゴールドがアドバイザーとして参加して整備を進めている。イメージとしては、エディーがイングランド代表HC時代に取り組んできたライン防御を素早い出足で仕掛けるハイプレッシャーディフェンスに近いスタイルだ。

「そうですね。比べると全然違うチームで、イングランドはディフェンスが大好きなチームで、日本人はそこまで好きじゃない。日本のラグビーは高校、大学そしてリーグワンをみても、アタック重視のチームが多い。唯一ディフェンスに特化したチームはパナソニック(ワイルドナイツ)くらいです。日本代表としても、もちろん力強いアタックをアイデンティティーとして持っていますが、ここからどうディフェンスを拘らせていくか、もっと重要性を理解させるように促しています。どんなディフェンスを求めているかというと、タックルして直ぐに起き上がり、スペースを埋めてという動きをやり続けることです。そういうマインドにどうやってシフトしていくかが大事なのです」

 そのために若手代表から取り入れているのが“エフォート(努力)”というワードだ。

「春のU23日本代表の試合の時にも、エフォートをレッド、ゴールドの2色で、どれだけ運動量があったか、努力したかを分けました。レッドは選手が歩いてしまっているような状態を差し、ゴールドがしっかり動いているという評価です。U23の試合ではレッドが合計165回ありました。これは、選手が起き上がったら直ぐに歩いてしまっているのが癖になっていることを意味しています。試合後に、歩いてしまっていたら結果的にディフェンスもこう(脆く)なってしまうと選手に理解させたことで、次の試合ではレッドの回数は65まで減っていた。今後は、いろいろなデータを用いて世界トップ10の各国と比べることで、我々がいまどのレベルなのかを明確にしていきたい。選手たちが、どういう役割を遂行して、どういう働きをしなければいけないか、どういう意気込みを持ってディフェンスしなければならないかというところを、数値を用いてもっとクリアにしていくので、より良いコーチングも出来ると考えています」

 先にブレークダウンを勝利のキーポイントと紹介したが、エディーはこの接点での戦いにおけるウェールズについても言及している。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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