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「無事に終わって」と言わない妻 突かれた核心、絶対に勝て…ボクサー京口紘人が未来を白紙にして挑んだ3階級制覇

アンソニー・オラスクアガ(左)の顔面に左パンチを入れた京口紘人【写真:徳原隆元】
アンソニー・オラスクアガ(左)の顔面に左パンチを入れた京口紘人【写真:徳原隆元】

初心には「怖さ」も含まれていた「不思議ですよね、それが…」

「酸素の薄い過酷な環境がいい」。ボクシングをする以外、何もない2週間の武者修行。標高1500メートルの高地グアダラハラで追い込んだ。破裂しそうな肺が体力強化を実感させる。飢えた猛者たちとスパーの連続。「初心に帰ることができる凄くハードな環境。精神的に成長できた」

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「挑戦者だぞ!」。小林尚睦トレーナーは檄を飛ばし続けた。ミットを持つ手が熱い。「鬼気迫るものを感じる」。入門時から見守ってきた渡辺均会長も「世界挑戦した時を思い出して、これ以上ないプレッシャーを持ってやっている」と変化を感じ取った。

 一から見直した体づくり。アスリートフードマイスターの資格を持つ亜希さんと一緒に、医師の栄養指導を受けた。「妻も進化している」。味はもちろん、献立も増加。摂取カロリー、栄養素、食事のタイミングまで徹底され、苦しい減量期を支えてもらった。2022年11月にライトフライ級王座から陥落。2か月後に結婚した。

「結婚してから世界チャンピオンになった姿を見せられていない。だから見せたい。いや、見せます」

 3月5日の公開練習。「懐かしいな。あの時と似ている」。多くのメディアに囲まれ、初めて世界に挑んだ日の鮮明な記憶が蘇った。

「今まではベルトを持っている側。今は何もない自分がベルトを懸けて戦う。本当に強いチャンピオンに挑むんやな。3月13日、その日だけでも勝てればいい」

 取り戻した初心には「怖さ」も含まれていた。

「互いが『相手をぶっ倒す』と思いながら過ごして、リングで殴り合う。怖いっすよ、殴り合うんですから。でも、ワクワクもするんです。不思議ですよね、それがファイターなのかな。試合に向けてどれだけ濃い時間を過ごしているか。そこに価値がある。きょう一日、頑張ったからそれに価値がある。

 その日に向けて汗を流して取り組んできた者同士が戦う場。だから、凄く神聖。だからこそ、怖い。より強い王者に挑むという怖さがあるし、結婚もしたし、負ける怖さも経験したし。

 難しいけど、毎日考えています、チャンピオンのことは」

 勝てば統一戦の話も出てくるが「先のことは全く考えない」。試合以降の予定を白紙にした。「リングに上がりたくても上がれない選手はたくさんいる。自分に期待して挑みたい」。心に唱え、リングに上がった。

「怖い」と思うのは亜希さんも同じだった。「無事に帰ってきて」と言わなかった理由がある。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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