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「神様、あれはなんだったの?」 ラモスとW杯予選、終わりなき“ドーハの悲劇”

囁いた主審「これで終わるよ」―しかし、襲い掛かったW杯予選に潜む魔物

「ゴン(中山雅史)がオフサイドラインぎりぎりにいて、一度戻ってから飛び出すと思っていた。でも戻ってこない。それならイラクがオフサイドトラップをかけた瞬間にパスを出そうと思った。絶対に副審はオフサイドを取らないと思ったからね」

 案の定、副審の旗は上がらず、日本が2-1とリードしたまま、時計の針は後半45分を回る。そしてイラクが、カウンターからCKを取った。

 主審は囁く。

「これで終わるよ」

 ところが、イラクは時間がないのに意表を突くショートコーナーに出て、オムラムの同点ヘッドが放物線を描きネットを揺するのだ。

「主審はCKの前に終了の笛を吹いても良かった。誰も文句なんて言わない。途中で物を投げ込み、試合を中断させたのもイラクのサポーターだった。なのに、どうして? それまで主審、副審、FIFA、みんなずっとイラクを苛めてきたんだ。不思議だよ、逆に主審に聞いてみたいよ」

 試合は2-2の引き分けに終わり、日本のW杯初出場の夢は4年先延ばしになった。

【了】

加部究●文 text by Kiwamu Kabe


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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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