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188cm115kgの逸材高校生も…ラグビー界で本格化した代表強化策「JTS」とは 欠けていた世代の橋渡しに本腰

ミーティングで声をかけるエディーHC【写真:JRFU提供】
ミーティングで声をかけるエディーHC【写真:JRFU提供】

参加した選手たちが語ったJTS合宿の内容とは

 では、JTS合宿では実際にどのような活動をしているのか。今回の合宿に参加した上ノ坊は、こう説明してくれた。

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「朝は5時半に起きています。練習は6時からですけど15分前集合なので、早く寝ないと朝が早いので午後10時半にはベッドに入っていますね。スケジュールはパンパンに詰められていて、朝から体を当てるブレークダウンのセッションがあったり、朝食を取ってから午前中に練習して、昼休憩を挟んで午後もう一回練習しています。夜もう一回ウエートトレがあったりします。その中でも、毎回エディーさんに怒られたり、細かい所のアドバイスをもらったりしています。緊張感がある練習が毎日続いていて、普段指摘されないことを言われたりしているので、成長しているなどいうのは実感出来る合宿になっています」

 全国クラスの強豪校、天理大の中心選手の上ノ坊だが、エディーの指導については「プレーごとにコメントとかをしていただけるので、その時にコミュニケーションを取っています。アーリーキャッチ(パスされる側に手を伸ばして、より早い時点で捕球する技術)のような細かい部分や基礎の部分を徹底的に教えていただいています」と大学よりワンステップ細かく、厳しい指導を実感しながら「いま活躍されてるトップ選手は、こういう生活をしてああなっていると思うので、こういうタイトなスケジュールをすることで成長していけるかなと思います」と期待感を滲ませていた。

 ハードワークは第1次エディージャパン時代から現在も、この指揮官のキーワードでもあるが、原石レベルの大学生にも同じ流儀が落とし込まれている。実は今回のメディア公開に当たり、事前に協会広報、チームに、ある選手の個別インタビューを相談したが見送られたのも「ハードワーク」で時間が作れなかったことも影響する。通常なら、初めて正代表合宿に呼ばれた若い選手は、合宿の中で練習方法や代表チームの決め事などを段階的に学んでいくものだが、JTS合宿を経験した選手は一足早く「エディー流」を体感することでスムーズに練習に入っていけることにもなる。

 メディア公開日に取材に応じたPR山口匠(明治大2年)も、エディーが陣頭指揮を執る合宿について、こんな感想を語っている。

「エディーさんがタフというのは噂で聞いていたので覚悟はしていたんですけれど、噂以上だったのはびっくりしました。本当に正確さを求めてくるし、どれだけ貪欲にやっても、結果に繋がっていなければやり直しさせられる。そういう部分で、これが大学とナショナルレベルの違いかなと思った」

 山口は、あるセッションでの選手の取り組み方を見たエディーが練習を取りやめたことも明かしている。結局、選手たちが自分たちの合宿中の姿勢や態度を話し合い、さらに前向きに練習に臨む環境が出来たという。まだスタートしたばかりの今季のJTSだが、エディーらしい、いい意味での選手との“取っ組み合い”が、若い選手相手に早くも始まっているのが判る。

 指揮官自身も昨季以上に長期に及ぶJTSの活動を「ラグビーナレッジ(知識)を増やす時間や、彼らのセフルケアをしっかり勉強させる時間に使っている。いいラグビー選手というのは、しっかり自分の体の面倒を見れるものです。それに加えて、ラグビーをより愛することを選手に教育する時間にも使っている」と説明。7回目の最終合宿には、「最もハイレベルでラグビーと勉強を両立した素晴らしい例」と評価する福岡堅樹さんを招くプランも明かしている。ラグビーと勉強の両立に挑んでいるJTSメンバーらには、日本代表で快足トライゲッターとして活躍しながら受験の準備を続け、現在は医大に通うレジェンドの話は最高のアドバイスになると期待する。

 正代表のHCがJTSまで指導の手を広げることや、むしろ代表強化に専念するべきだという意見もあるかも知れない。だが、このプロジェクトがエディー自身および正代表へのリターンになるのは明らかだ。エディーは「いまのJTSスコッドから1人、2人がそのまま日本代表に入れるシチュエーションが作れれば、それだけで日本代表の層が厚くなることになる」と語っているが、背景には日本人選手の活躍の機会、成長が難しくなっているリーグワンの厳しい現実がある。

 現在のリーグワンには、世界のトップクラスの他国代表籍選手、代表経験のない若手有望株、そして留学生と、外国籍選手が大量に流入している。リーグ側では、日本選手のプレー機会を増やしたいという狙いで、カテゴリ制という出場枠などに“優遇”も設けているが、チーム側では、勝つためには実力のある外国選手を出場枠内で最大限に起用したいという思いもある。このような現実を踏まえて、エディーはこう指摘する。

「今のリーグワンをみても日本人選手のプレータイムは50%程度です。なので、大学にいる才能ある選手をより早く育成することで、今後自分たちの(代表)セレクションの幅も増やしていきたいと考えているのです」

 今回のJTS合宿は、23歳以下の大学生世代を対象にしているが、リーグワンなど社会人チームの若手選手も網羅して、従来強化の手が十分には届かなかった20代前半の世代にスポットを当てていくことが、日本代表が再びワールドカップで8強の座を取り戻し、さらに上位に浮上するためには欠かせないことは、代表強化に携わる指導陣、協会上層部なら十分に理解しているはずだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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