ラグビーにレンタル移籍導入、“助っ人化”に懸念 脳震盪の度合を数値化する最新科学テクノロジーとは
5節を終えたNTTリーグワン・ディビジョン1は、1週の試合休止を挟んで2月1日からゲームを再開する。序盤戦では接戦の増加など観戦する側も楽しめる地殻変動が起きているが、その背景には、前編で紹介したチームによる強化や、カテゴリ制の変更も影響している。後編では引き続き様々な規約変更(導入)がリーグにどんな変化を生み出したのか、そして集客面、新たに導入されたテクノロジーの影響なども検証する。(前後編の後編、文=吉田 宏)
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ラグビーライター・吉田宏氏のリーグワン検証/後編
5節を終えたNTTリーグワン・ディビジョン1は、1週の試合休止を挟んで2月1日からゲームを再開する。序盤戦では接戦の増加など観戦する側も楽しめる地殻変動が起きているが、その背景には、前編で紹介したチームによる強化や、カテゴリ制の変更も影響している。後編では引き続き様々な規約変更(導入)がリーグにどんな変化を生み出したのか、そして集客面、新たに導入されたテクノロジーの影響なども検証する。(前後編の後編、文=吉田 宏)
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チームの戦力にも直結するカテゴリ制の改訂と共に、今季導入されたのが「期限付き移籍」だ。いわゆるレンタル移籍だが、第5節を終えた段階でこの制度を使ったチームはない。序盤戦の振り返りには当てはまらないが、各ディビジョンの順位争いや成績に直結するレギュラーシーズン終盤戦、プレーオフ、入替戦などのポストシーズンの段階での適用を踏まえて、事前に問題点を考えておく必要はあるだろう。
詳細はリーグワンホームページ(「選手規約および登録に関する規定」改訂)を参考にしていただきたいが、基本的なルールは、移籍を受け入れる場合は上限3人(4月以降は1人)、1シーズン内での移籍先から元の所属チームへの復帰は不可能となっている。
主な趣旨としてリーグ側では「チームにとっての選手活用機会、および、選手にとっての活躍機会を増やし、シーズン中の戦術的な補完や、ケガ等での選手不足による試合不成立の回避を実現する」としている。とりわけ下部リーグの選手、公式戦経験の少ない若手選手でも、高いレベルの実戦経験を積むことで成長を促すのが大きな狙いで、それに加えてシーズン途中でのチームの戦力維持、強化も目的とされている。
制度自体は、選手により良いプレー環境、プレー機会を創り出そうというものだが、詳細をみると、このような趣旨に基づいたものとは異なる形で適用されてしまう可能性も浮かんでくる。あるチームが、あと1勝出来れば入替戦を回避できる、入替戦でどうしても負けられないために戦力アップしたい――。このような事情で、他チームから有力選手を“助っ人”として補強する可能性だ。もちろん規定上はこうした都市対抗野球のような補強も認められてはいるが、実際に今季適用されるケースを現段階で想定すると、若い選手の経験値アップという本来の目的よりも、後者のチームの事情によるレンタル補強が横行してしまうのではないか。プレーヤー・ファーストではなくチーム・ファーストの適用。そんな憶測は杞憂に過ぎないだろうか。
繰り返しになるが、実際にこの制度が適用されるのはシーズン後半戦だろう。リーグ関係者が「具体的に適用されていないので現状での判断は難しい部分がある」と語っているように、制度の評価は今後の具体的な移籍が行われるのを待つしかないのだが、実際に適用されたケースを検証しながらでも、やはり細かなルール策定は必要だろう。
あまり1つの規定を、ガチガチの条件で縛り付けるのは個人的にも歓迎しないが、本来の可能性を持ちながらプレー機会の少ない選手に実戦経験を増やすことを重視するのであれば、社会人リーグやチーム在籍年数や年齢、公式戦プレー時間などという若手のレンタル移籍が優先されるような条項があってもいいだろう。