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「ボクシングが好きだから」 井上尚弥は自ら退路を断つ、試練だらけの5か月を支えた自律心

4回KO勝ちした井上【写真:中戸川知世】
4回KO勝ちした井上【写真:中戸川知世】

なぜ、自分を律することができるのか 答えはシンプル

 12月に予定されたサム・グッドマン戦。各団体に義務付けられた「指名試合」のため避けては通れないが、レベルの差はあった。繰り返したのは「前回の自分を超える」という同じ言葉。「自分の良いパフォーマンスを出すための練習量がわかる。そこに到達するように練習している」。甘えを許さず、自ら退路を断つ。調整過程の“対戦相手”は自分だった。

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「ライバル」と表現される選手がいない。強くなりすぎた。それでも自分を律することができるのは、なぜなのか。答えはシンプル。

「ボクシングが好きだから」

 ジムの大鏡に向かい、シャドーを打つ。「ボクシングとの向き合い方が変わっている」。ジャブ一つとっても、角度やタイミングで質が変わる。減量方法の試行錯誤はやめない。極める、達人、そんなワードがしっくりくる。変化を感じ、成長を知ることが楽しみにもなった。

「あとはファンの期待に応えたい」

 初めて世界王者になって10年9か月、世界戦しかしていない。2階級4団体統一、現役世界最多の世界戦24勝、世界2位となる3度目の4団体防衛。世界のボクシング史でも記録的な選手になったが、苦しいはずの過程にネガティブな感情はない。

「この10年、王座を守り続けることに対して、大変という想いをもって過ごしてきたことはない。ボクシングが好きで、強くなりたくて、強い奴と戦いたくてやってきた結果。ボクシングをやる以上、この先もその気持ちは変わらない」

 だから、試練だらけだった今回の調整も乗り越えられた。試合を10日後に控えた12月14日、グッドマンの左目上裂傷で1か月延期。さらに1月11日、再負傷でキムが代役に。陣営の大橋秀行会長も「小学生の頃から50年くらいボクシングを見ていますが、こんなのは初めての体験」と調整の難しさを慮っていた。

 練習計画を全て狂わされた本人は「何とも思っていない。2度の変更はコンディション作りに凄く参考になった」と不安を一蹴。メディアの前で強気の姿勢を崩さず、むしろ突然の試練を歓迎するかのようだった。

「相手が急遽代わって、ここで僕がモチベーションが上がらないとか言えば、チケットを買った人に申し訳ない。受けてくれたキム選手と足を運ぶファンの方には、最大限のリスペクトを持ってリングに上がる。油断することなく井上尚弥のボクシングを見せます」

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