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井上尚弥インタビューvol.3 父の流儀が最強の礎「手を上げられたこと一度もない」

井上が語った父の流儀とは【写真:荒川祐史】
井上が語った父の流儀とは【写真:荒川祐史】

“放任”だった真吾トレーナー、父親になって思う凄さ

――楽しくやってこられたというのは父である真吾トレーナーの影響も大きいと思います。

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「父は塗装業をやっているから教えるのがうまいと思うんですよ。仕事で若い職人さんに仕事を教えるじゃないですか。よく職人さんとうちの家族で一緒にごはん食べに行ったりしてましたから」

――真吾トレーナーは若い人のやる気を引き出すのがうまい。

「そう思います。あとはいろいろな関係があると思いますけど、ボクシング未経験のお父さんが無理やり子どもにボクシングをやらせるというのはどうかと思いますね。大会で試合に負けた子どもをタオルで叩くお父さんを見たことがありますけど、そういうことをすると続かないと思うんですよ。自分たちは父に手を上げられたことは一度もありませんね」

――真吾トレーナーから言われて印象に残っていることはありますか?

「『練習は仕事と思ってやれ』とずっと言われていたんですよ。小さい頃からです。当時は仕事が分からないからピンとこなかったですけど、それはずっと言われてきましたね。やるときはやれということですね。それが今は練習が仕事になっているので」

――井上選手も2017年に子ども(長男・明波くん)ができました。あらためて「親父ってすごいな!」と思うのではないですか。

「それは思いますよ。相当思います。仮に自分の息子がボクシングをやったとしても、あれだけ熱心にというか、手を抜かずにできるかなと思ったらできないですよね」

――ものすごい情熱だったと想像します。

「子どものときの話ですが、自分と拓真が走りたくない。じゃあ土曜日、家族で買い物に行きました。もう時間も遅くって、帰りの車の途中、『家に帰ったら走るのかな、お父さん走るって言うのかな』という感覚が子どもにはある。で、父は『走りに行こう』とは言わない。言わないけど自分たちが走りに行くか見ている。複雑ですよ。拓真と『走りに行ったほうがいいよな、走りに行く?』みたいな。自分たちに決めさせる。一番怖いですよ。言われたら言われたで、走りにいかなくちゃとなるんですよ。でもそうしないで、自分たちで決めさせる。大事だと思いますよ。家にトレーナーがいる。でも何も言われない…。この空間さぁどうする? みたいな感じですよね」

――当時から自主的に取り組むことを求めていたということですね。それにしても井上選手の長男がボクシングの試合を見ている動画、かわいくて話題を呼んでます。(※SNSで公開した動画が世界的にも話題)

「今1歳ですけど、テレビ見てパパだってわかってるんですよ。ポスターとかも分かるんですよ」

――お父さんの姿を見たらボクシングやりたくなるかもしれませんね。

「そうですね。でもやらせたくはないですよ」

(最終回に続く)

(渋谷 淳 / Jun Shibuya)

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