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エディー日本、夏の7試合で顕著だった「186.3」 世代交代に舵切り、日本の弱点ポジションに“隠し球“

フィジー戦で存在感を見せたディラン・ライリー【写真:(C)JRFU】
フィジー戦で存在感を見せたディラン・ライリー【写真:(C)JRFU】

今後は世代交代へ舵切り「100回でも何回でもお伝えします。新しいスコッドが必要だ」

 来月上旬にも再始動する日本代表だが、1ステージ上の相手との戦いに、エディーがどんなメンバー選考をするのかは興味深い。ここまでは一部の実績組に多くの若手を加えた布陣で戦ってきたが、フィジー戦後の会見で選手のセレクションについてエディーがわずかながら語気を強めたシーンがあった。

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「これまで何度も伝えてきたことを今日も敢えて伝えます。前回のW杯でジャパンは、年齢層の高いシニアプレーヤーたちのスコッドだった。今回、私が就任する際に任された仕事は、ジャパンで新しいスコッドを形成することです。何度もこういう質問がありますが、私が100%確信しているのは若い世代、次の世代の選手たちを輩出していかないといけないことです。過去2回のW杯ではとても古い選手たちに頼っていた。だが、新しくフレッシュな才能を発掘することが今の一番の課題です。なので、私の目指すものが皆さんに伝わっていなかったことは謝罪しますが、100回でも何回でもお伝えします。新しいスコッドが必要です」

 この発言は、この先のテストマッチへ向けて、現在積極的に招集してきた若手と代表から外れている経験者をどんなバランスで起用していくのかという質問に対しての回答だ。若手起用の方針はメディアも重々承知しながらも、強豪国との対戦が待つ中で、未熟さも露呈する現行メンバーにテコ入れがあっても不思議ではないという考え方もある。だが、この発言からはエディーが「世代交代」へと強く舵を切っていると受け止めていいだろう。

 ただし、過去にエディーは「現状は選手の能力を見ていきたい。いい選手は(代表に)残るだろうし、そうじゃない選手は去ることになる」とも語っている。今季代表合宿に呼ばれてきた若手も、期待したパフォーマンスに至らなければ次は新しいメンバーが呼ばれるのは代表セレクションの宿命でもある。そのような状況が起これば、新たに招集されるのは他の新たな若手なのか、経験値のあるシニア選手なのかは現時点では流動的でもある。100%“古いメンバー“が呼ばれないことが確定しているわけではない。

 もちろん、PNCでは35歳以上の選手は休ませるという方針の下でチームを離れているFLリーチマイケル(東芝ブレイブルーパス東京)や、フランスリーグ挑戦中のSH齋藤、No8テビタ・タタフ(ボルドーベグル)という春夏に選考されたメンバー、そして一部のコンディション不良で参加を見送った経験者はいまだにエディーのメンバー構想に残っている。だが、それ以外の昨秋までのメンバーについては、決して門戸が大きく広げられていないことも確かなようだ。ファン、関係者の中には、これから対戦するNZ代表ら世界の強豪に対して最強の布陣を組んでほしいという期待もあるはずだが、指揮官はそんな思い以上にジャパンを2027年とそれ以降にどこまで戦えるチームに仕上げることが出来るかというチャレンジにプライオリティーを置いている。

 今季戦ったテストマッチ7試合を振り返れば、この先のセレクションでも“当確”に近い採点をもらった選手、まだ十分な評価を得られていない選手も見えてきている。

 チームのコアメンバーとして絶対的な存在感を見せたのは2人。CTBディラン・ライリー(埼玉WK)は、フィジー戦前半20分の自分一人で防御突破からトライまで持っていくプレーに象徴されるエースとして不可欠な存在になりつつある。身長201cmの大型LOワーナー・ディアンズ(BL東京)も、強みのラインアウトジャンパーだけではなく、ボールキャリーやタックルなどフィールドプレーで大きな成長を見せる。タックル成功回数では、ワーナーはイタリア戦でチーム2位の9回を成功すると、その後のカナダ戦12回(同3位)、アメリカ戦16回(同1位)、サモア戦7回(5位)、フィジー戦13回(3位)と高い数値を残している。本来LOに求められるのは、体の大きさ、重さを生かした空中戦や局地戦だが、このようなタックル成功の数値を残すためにはFL、No8という機動力が武器のポジションと同等に近いワークレートが必要だ。プレー時間に関しても「自分から出たいとお願いしている」と語るように全7試合に先発出場して、6試合でフル出場するタフさも大きな評価ポイントだ。

 W杯フランス大会でも決定力をみせたWTBジョネ・ナイカブラ(BL東京)が2トライ、リーグワンでの実績を持って今季代表入りしたマロ・ツイタマ(静岡ブルーレヴズ)も初出場のカナダ戦から4試合で4トライと、ライリーの6トライには及ばないもののフィニッシャーとしての期待に応えている。今後もアウトサイドBKの基本メンバーに残るポテンシャルは証明している。PNCではベンチスタートだったFLティアナン・コストリー(神戸S)は、持ち味のスピードに自分自身で課題に挙げたフィジカル面でも、テストマッチで十分に戦えるポテンシャルを見せた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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