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怒った協会幹部「強化費をフリーと女子に回せ」 肩身が狭かった日本のグレコに2つの金メダルが輝くまで

「技がない」「地味すぎ」と陰口を叩かれても溢れる「グレコ愛」

 リオ五輪当時、グレコ監督だった西口茂樹氏は「できることは何でもやった」と振り返る。海外への長期遠征や単独での武者修行、国内では手薄な練習相手を求めて、選手を強豪国に送り込んだ。東京五輪では強化本部長としてレスリングをメダルラッシュに導いたが、グレコは金メダルに届かず。「今回の金メダル2個は素晴らしい。指導した松本(慎吾・日体大)監督の意地ですね」と話した。

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 西口氏も松本監督も元グレコの五輪選手。ただ、メダルには届かなかった。だからこそ「意地」。国内で女子やフリーと比べられ、世界では厚い壁に跳ね返される。海外修行、国内での猛練習、すべては五輪で勝つため。それが、やっと実った。

 前述の記事を見て、泣いた選手がいたという。怒った選手もいたという。「グレコを守ろう」「なくさない」。そんな思いを持ったとしたら、幹部のゲキも無駄ではなかったと思う。その後の予選でリオには2人が出場、太田忍の銀メダルが「グレコ復権」への狼煙となり、東京につながり、パリでの2個の金として実った。

 レスリングの取材をしていると、選手の「グレコ愛」を感じることが多い。テレビ解説をしていた伊調馨さんのように、競技としての魅力を語る選手も多い。「押し合っているだけ」「技がない」「地味すぎ」と陰口をたたかれるからこそ、フリーに比べて厳しい環境にあったからこそ、その愛はより強くなるのだ。

「40年ぶりに勝ったことより、40年勝てなかったことが悔しい」。文田の言葉にも、深い「グレコ愛」を感じる。日本レスリングの歴史を作った2つの金メダル。ここから、日本グレコの新しい歴史が始まる。自信たっぷりに街を「闊歩」するグレコの選手が楽しみだ。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)


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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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