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「早慶戦も可能な1~2万席のラグビー場建設を」 東京の行ったことがない区1位・板橋で動き始めた夢

板橋区で行われた体験会、ラグビー界からも区への期待は高まっている【写真:吉田宏】
板橋区で行われた体験会、ラグビー界からも区への期待は高まっている【写真:吉田宏】

ラグビー界は秩父宮の建て替え問題もあり、板橋区協会の挑戦に高まる期待

 その一方で、ラグビー側からは、板橋区協会の挑戦に期待は高まっている。そこには、ラグビーの聖地と呼ばれる秩父宮ラグビー場(港区)の建て替え問題が背景にある。1947年に完成した秩父宮は、老朽化と神宮外苑地域の再開発に伴い建て直しが決まっている。2027年の暫定オープンを目指しているが、屋根付き人工芝の施設になるのに伴い、ラグビー以外のコンサートなどでの使用や、国立競技場同様に使用料の高騰など、従来通り国内リーグが開催されるのかが危惧されている。

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 現在でも秩父宮の使用は国内最高峰のリーグワンの開催が中心だ。リーグ側では、各参入チームに本拠地(ホストスタジアム)での試合開催を促している一方で、チーム側では、サッカー等他競技、イベントとの兼ね合いで試合会場の確保に苦しんでいる。そのため、多くのチームが立地条件もいい秩父宮での試合開催を求めているのだ。

 大学ラグビーに関しては、昨季で関東大学対抗戦、リーグ戦グループ合わせて6開催日に留まる。現状でも使用状況が厳しい中で、ラグビー関係者、ファンからは東京で大学ラグビーが観られなくなっているという不安の声もある。大学公式戦を主管する関東協会でも、公式戦会場の新たな開拓、確保はこれからの重要課題になる。そのため、23区内の板橋に大学公式戦開催が可能な規模の施設が建設されれば、学生ラグビーの拠点の1つになるという期待感もある。

 期待感は協会に留まらない。先に触れたように、リーグワンでも試合会場や本拠地となるスタジアム確保にも苦戦が続いている。リーグ新規参入時には3000席の客席を持つグラウンドの保有が条件となり、最終的には1万5000席のスタジアムの使用が義務づけられるのだが、条件をクリア出来ていないチームも多くない。2024-25年シーズンに新規参入するヤクルトレビンズは、板橋区にも近い埼玉・戸田市にグラウンドがあるが、ホストスタジアムは群馬・前橋市にせざるを得なかった。同時に参入するセコムラガッツも、埼玉・狭山市のグラウンドをホストスタジアムに改修する方針だが、将来的には新たな試合会場が必要になりそうだ。

 区協会の小野澤智史理事長は「もしリーグワンチームも関心を持ってくれるようになると、構想に現実味も見えてくるのではないでしょうか。埼玉パナソニックワイルドナイツが、熊谷に入ってきたような話に変わってくると思うんです」と語る。群馬県太田市に拠点があったワイルドナイツは、2019年ワールドカップのために改築された県営熊谷ラグビー場の優先使用権を得て熊谷に移転してきたのだが、板橋区協会も様々なラグビー関係者を巻き込んだスタジアム建設の機運醸成を夢見る。

 スタジアム建設は、まだまだ板橋区のラグビー大好きなおじさんたちの夢物語のような空想かも知れない。税金の投入や、大規模な敷地の確保などの課題を考えれば、建設に疑問を持つ声も出てくるはずだ。区協会とラグビー界が連繋して、区や区民に、どこまで楕円球への飽くなき情熱を伝えることができるのかが、空想を構想に変える第1歩になる。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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