「日本は今、適切な野心を持っている」 日本代表HC復帰の真相、“超速”で目指す2027年W杯の青写真――エディー・ジョーンズ独占インタビュー
迷いがなかった日本代表再挑戦「日本で生活をしようと妻とは話していた」
日本協会とエディーが次回27年W杯で目指すのは、23年には手離したベスト8の奪還。目的達成のためには、すべてを準備万全で臨もうとする完全主義者ぶりは以前からだが、福岡の短期合宿も単なる“面通し”に終わらせていない。大学生9人を招聘するなど、これから代表メンバーとして期待の原石を積極的に選び、選手のポテンシャルを確かめるのと同時に、エディー流のラグビーを落とし込み始めている。
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「日本には本当にいい若い選手たちがいます。もっと良くなっていきたいとコミットしている選手たちがいるんですね。合宿に9人の大学生を呼んだが、彼らは自分たちがどこまでいい選手になれるかを、まだ本当にはわかっていないと思います。私たちのプレーのやり方というのは、学び続けたいと思い続ける意欲が必ず必要になると考えています。今までやってきたものを理解した上で、その先にもっといいやり方があるとちゃんと理解出来る選手や、彼ら自身の準備でも、今までとは違う新しいレベルでやらないといけないと理解できる選手が必要なのです」
HC就任までは東京サントリーサンゴリアスでディレクター・オブ・ラグビーも務めてきたエディーだが、代表HCとしてグラウンドに立ったのは9年ぶりだ。その空白の時間を経て目の当たりにした日本選手の進化も認めている。
「プロ選手としてのレベルが上がっている。S&C(ストレングス・アンド・コンディショニング=パフォーマンス向上のためのトレーニング)のところを見ても、さらに高いレベルはありますが、ベースが上がっていますね。その部分では改善されてきたと思います」
昨年12月の就任会見でも、リーグワンが日本ラグビーの成長を促したと評価している。エディーが日本を離れてから発足した新しいリーグだが、前身のトップリーグ以上にスター選手が集まり、同時に世界クラスの指導者も大挙して加わっている。日々の練習も週末の実戦でも、日本選手に質の高いスキルや戦術、フィジカリティーが落とし込まれることでリーグのスタンダードが上がっている。
もちろん、そこには日本代表が19年W杯でベスト8というエディー時代には辿り着けなかった高みに立ち、恩恵として多くの強豪国と試合を組めたことも大きく影響している。そのような恩恵を前向きに評価するエディーだが、自分自身が日本に戻ってきての再挑戦に迷いはなかったという。
「いつも日本に戻ってきたいとは思っていましたから、難しさはなかったですね。本来は2023年でイングランド代表の仕事を終わらせて、日本で生活をしようと妻とは話していました。先日の土曜日に、ある(都立)高校でセッションをしたのですが(もし代表HCのオファーが無くても)日本でどこかのチームのコーチになっていたかも知れません」
エディーの頭の中では、昨秋のW杯まではイングランドの指揮を執り、妻とエディー自身の母親の祖国に移住しての生活を思い描いていた。だが、2022年シーズンを終えた時にイングランド協会から成績不振を理由に契約を打ち切られたことで、ロードマップが大きく描き替えられた。イングランドを離れたエディーに声をかけたのは母国オーストラリア協会。ホスト国となる27年W杯までの契約を結んだことで日本に住む計画が白紙になっていたが、そのシナリオも1年を待たずに修正することになる。
「オーストラリア協会とは5年間のサインをしました。ただ、協会が私のやりたいこととうまくマッチしていなかった。そこで、日本のHCになる機会ができた。長くに渡り私にたくさんの機会を与えてくれた日本で、何か恩返ししたいという気持ちがありました」
オーストラリアメディアを中心に、日本との密約があったのではと物議を醸した就任騒動だったが、紆余曲折の末に当初のシナリオ通り23年W杯後の日本での活動が始まったことになる。当初の計画との違いは「日本代表HC」という肩書が追加されたことだった。