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初めて歩き、すぐに階段を上った1歳の愛娘 西山雄介が引退撤回して東京マラソンを激走した理由

会見では家族の話のときだけ頬が緩んだ【写真:中戸川知世】
会見では家族の話のときだけ頬が緩んだ【写真:中戸川知世】

20キロ手前で転倒も…前世界記録保持者を追い抜く激走

「今までで一番いい状態でスタートラインに立った」。4度目のマラソンで過去イチのコンディション。運命の号砲が鳴り、日本人の先頭集団に入った。だが、20キロ手前ではアクシデント。木村慎(Honda)らとともに転倒に見舞われた。道路に体を打ち付け、這いつくばる。

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「ここで気持ちを切らしてしまったら、今までやってきたことが無駄になる」

 家族の想いを力に変え、踏ん張った。33キロ付近で日本人トップに浮上。転倒なんて関係ない。東京五輪で連覇し、“生きる伝説”と称される前世界記録保持者エリウド・キプチョゲ(ケニア)も抜いてみせた。

 35キロ通過時点では設定記録を6秒上回るペース。「2時間5分50秒を切るだけの練習をしてきた。切る自信はあった」。しかし、五輪切符は手からこぼれ落ちた。残り1枠は1番手だった今大会不在の大迫傑(Nike)へ。「結果的に全然ダメだったので、非常に悔しいし、弱さを感じた」。自分を責め、涙を堪えた。

「このオリンピックが最後の挑戦だと感じていた。本当にパリしか考えていなかった。もう少しゆっくりして考えていきたい」。今後は白紙。それほど全てを懸けていた。

 落胆の色を隠せなかったレース後の会見。「娘の姿やそれを支えてくれている妻には感謝しています」。家族の話にだけは頬が緩んだ。魂の激走。その意味は、物心がついた後でも娘に伝わるはずだ。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)

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