初めて歩き、すぐに階段を上った1歳の愛娘 西山雄介が引退撤回して東京マラソンを激走した理由
東京マラソンは3日、東京都庁~東京駅前行幸通りの42.195キロで行われ、男子の西山雄介(トヨタ自動車)が自己ベスト2時間6分31秒で日本人トップの9位だった。今夏のパリ五輪残り1枠を懸けた最終選考レース。設定記録2時間5分50秒を切った日本人最上位が内定だったが、西山は41秒届かず、悔し涙を流した。途中の転倒を言い訳にせず、貫いた自分の走り。一時は引退を考えたが、踏みとどまった裏には愛娘と妻の存在があった。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
東京マラソン
東京マラソンは3日、東京都庁~東京駅前行幸通りの42.195キロで行われ、男子の西山雄介(トヨタ自動車)が自己ベスト2時間6分31秒で日本人トップの9位だった。今夏のパリ五輪残り1枠を懸けた最終選考レース。設定記録2時間5分50秒を切った日本人最上位が内定だったが、西山は41秒届かず、悔し涙を流した。途中の転倒を言い訳にせず、貫いた自分の走り。一時は引退を考えたが、踏みとどまった裏には愛娘と妻の存在があった。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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左手首の時計に目をやった。ゴールまで残り300メートル、この時点で2時間5分45秒。設定記録は5秒後に迫っていた。もうパリには届かない。それでも、西山は表情を変えることなく最後まで腕を振った。
2時間6分31秒。日本人トップの9位でフィニッシュしたが、逆転内定に41秒届かなかった。両手で顔を覆う。悔しさを堪えきれずに屈みこみ、涙した。
「本当にオリンピックを決めるつもりで来たので、その一心で最後まで走りました」
目を潤ませながらも、気丈に取材対応。46位に終わった昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)後は引退も考えた。「正直、あのレースだけは振り返られない」。それほどの惨敗。「MGCで(パリ五輪出場を)決めるつもりでいた。陸上も引退しようかというくらい落ち込んだ」。29歳の西山を踏みとどまらせたのは、1歳4か月になる長女と妻の存在だった。
初めて歩いた愛娘。かと思えば、階段を上り始めた。息を切らしながら、懸命に踏ん張る小さな足。毎日のように成長する。「僕もあと少しだけ娘と同じように成長したい」。隣りを見れば妻がいる。「2人をパリに連れて行きたい」。その一心で再び戦うことを決心した。