井上拓真が評価を一変させたKO防衛 兄・尚弥の残像を拭い去るまで「前は退屈だったと思う」
ボクシングのWBA世界バンタム級王者・井上拓真(大橋)が25日、初防衛戦から一夜明け、神奈川・横浜市内の所属ジムで会見した。前夜は東京・両国国技館で世界戦初のメインイベントを務め、同級9位ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に9回44秒KO勝ち。涙のKO防衛を果たした。試合直後に自ら触れた2階級4団体統一王者の兄・尚弥との比較について、この日も言及。ファンを沸かせたKO劇が生まれるまでに、拓真にしかわからない苦労があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
一夜明け会見
ボクシングのWBA世界バンタム級王者・井上拓真(大橋)が25日、初防衛戦から一夜明け、神奈川・横浜市内の所属ジムで会見した。前夜は東京・両国国技館で世界戦初のメインイベントを務め、同級9位ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に9回44秒KO勝ち。涙のKO防衛を果たした。試合直後に自ら触れた2階級4団体統一王者の兄・尚弥との比較について、この日も言及。ファンを沸かせたKO劇が生まれるまでに、拓真にしかわからない苦労があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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「見ている人も退屈だったと思う」。悲願の世界王座に返り咲いた昨年4月の王座決定戦。完勝ながら、拓真は自身の判定勝ちをこう評した。試合後にスマホを開けば目につくSNSのコメントや記事。「自分は褒められたことがない。兄と比較した評価ばかり」
過去18勝のうちKOは4回(KO勝率22%)。抜群のフットワークやハンドスピードで相手に何もさせない。着実にポイントを奪い、気づけば完勝。だが、アウトボクシングは技術のわかる玄人ファン以外には伝わりづらい。何より、尚弥の存在がついて回った。
「偉大な兄と比べられる。山場をつくりたい。兄弟である以上、自分も盛り上げる試合をしたい」
鬼門とされる初防衛戦。相手は1つ下の階級ながら世界王座を9度防衛してきたアンカハスに決まった。真価を問われる「過去イチの強敵」との大一番。試合1か月半前、父・真吾トレーナーから呼び出された。数年ぶりにスパーリング映像を一緒に研究した。
「ここで行かないと!」「フェイント!」「ここ、もったいないじゃん!」。良いパンチを打った後に様子を見てしまう悪癖。さばいたらしっかり打ち返す。「くっついたらボディー!」。スパー中も耳にタコができるくらい言われた。
真吾氏は“呼び出し”の経緯を明かす。
「スパー中の言葉だとなかなか頭に残らない。内容は良いので、自分で『それ以上を』と思うのは難しいじゃないですか。だから、映像を見ながら細かく言いたかった。
ナオ(尚弥)とタク(拓真)は色が違うけど、自分は同じ立ち位置に持って行きたいんですよ。見ている人を試合内容でグッとさせたい。アウトボクシングはそれはそれでいいけど、それを残しながら幅を広げていきたい。いろんな思い入れがあるんです」
そして、拓真の苦労を感じ取っていた。
「やっぱりナオと比較される。それを口にはしないけど、親としては暗黙でわかるんですよ」