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「50年先の日本ラグビー界にとって重要」 各国協会と提携、専務理事が描く未来への周到な戦略

各国協会との提携の先にある日本の思惑

 しかし、その一方でニュージーランド、アイルランドら世界のトップ10か国が、6か国対抗、ラグビー・チャンピオンシップで毎シーズン、ハイレベルな試合を確保しているのに対して、日本は単発の試合を組むだけに止まっているのは、今も変わらない。今回のW杯でも、日本が敗れたイングランド、アルゼンチンはともに毎年トップ10か国による大会に参加している国だった。日本が倒すべき上位10か国は毎シーズン、互いに真剣勝負を組みチーム強化を進めているが、挑むべき日本は定期戦を組めていない。このような不均衡を解消する1歩が、今回の新大会でもある。その実現に向けて日本協会も周到な準備、根回しを続け、ようやく10月のワールドラグビー理事会で可決された。

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「そもそも今回の決定も、本当に最後まで分からなかった。最後の最後に頓挫する可能性もありました。最後、投票で蓋を開けてみたら、ぎりぎりの票で決まりました。私もいろいろな協会と話をしてきましたので、当然(日本参入の)準備をして進めていますが、まだ決まってない。ここも(最終確定まで)何が起こるか分からないと思っています」

 岩渕専務理事は、各国協会と話し合うだけではなく、具体的なアクションを起こしている。日本協会は今年5月にニュージーランド協会、7月にオーストラリア協会と提携を結び、8月にはイタリア協会と覚書を締結している。その内容は男子15人制から女子、7人制、ユースなど代表チームの交流から、レフェリー、普及活動など多方面に及ぶものだが、今回の国際大会などワールドラグビーでの審議や投票でも、ともに連携していくための伏線になった。W杯期間中のワールドラグビー理事会で新国際大会などが審議されることを踏まえて、主要協会とのパートナーシップを事前に結んで日本に有利な決議に持ち込もうという周到な準備をすることで、最終投票での可決に持ち込んでいる。

「例えば、SANZAAR(南半球強豪4協会の合同機関)は基本的に1つのブロックですし、ヨーロッパの6か国(対抗)も1つのブロックです。でも我々日本は今、どこのブロックにも所属していない。その意味では、やはり自分たちでブロックを作っていく努力をしないといけないし、自分たちで他協会との2か国間の関係性を作って、それがいい意味でブロックとして自分たちを後押ししてくれるような形にしていく必要がある。ニュージーランド、オーストラリア、イタリアとのいろいろな連携というのは、試合などの交流よりも、方向性を一緒にして、大きなところでの連携ができるかどうかに一番大きな意味合いを持っていると思っています」

 地理的にも孤立する極東の島国だからこそ、協力の手がどこからか差し伸べられるのを待つのではなく、自分たちから進んで繋がりを求めていく。このような専務理事の戦略はさらに拡大していく。そこにはハイパフォーマンスユニオンとしての恩恵を得るのと同時に、今度は与える側の協会になるという責務を踏まえた上で、その先には協会が大きなミッションに掲げる2度目のW杯開催へ向けた戦略がある。

「ニュージーランドらハイパフォーマンスユニオンだけではなく、今は韓国とレフェリーの協定を結んだり、他のアジアの国ともいろいろな関係性を築いています。それは今後、ハイパフォーマンスユニオンとしての日本の役割をしっかりと固めて、将来的に再びW杯を招致する時に応援をしてもらうことを考えています。いろいろなユニオンを応援していくことで、世界での立ち位置をグラウンド上のパフォーマンスだけじゃないところでしっかりと固めるというのが、10年、20年、50年先の日本のラグビー界にとっては重要です。ハイパフォーマンスユニオンになりましたとか、W杯で前回こういう成績でしただけじゃない取り組みをしていく必要があります」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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