「50年先の日本ラグビー界にとって重要」 各国協会と提携、専務理事が描く未来への周到な戦略
ワールドラグビーの危機感は「この2、3年で強まっている」
このようなラグビー特有の閉鎖性に、新たな国際大会が再び一石を投じるはずだという期待感、可能性が、ようやくワールドラグビーと主要国協会の重い腰を押し上げたのが今回の正式決定に結び付いた。しかし、そんな機運の中でも、様々な課題や議論があったという。
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「一方で、各論に入っていくと意見の不一致はありました。例えば財政面や試合日程の問題です。ヨーロッパのリーグにとっては、新大会をやれば試合数が減ることになる。10年近く話し合われてきたのですが、その都度、頓挫してきたのです」
頓挫を繰り返した歴史の中で、今回ワールドラグビーに変化をもたらした一端にも、日本の存在があったという。
「例えば、今までは日本もそういう話し合いの中に入っていなかった。今回日本が入っているというのは、新たな、いわゆるラグビーの伝統国以外の国が入ってきて、そういう国が何を考えているのか、そういう国がどういう状況なのか、次の日本を作らないといけないという考え方が、数年間でワールドラグビーの中に生まれてきたのは間違いないです。フィジーもそうですけれど、W杯でトップ8に入ってくる新たな国をどう作っていくのか。そういう危機感が、この2、3年に本当に強まったのが、変化の大きな理由だと思います」
ワールドラグビーは今年5月に、日本協会のハイパフォーマンスユニオン入りを発表した。これは、代表チームの実力はもちろんながら、協会の事業規模、収益性、将来の発展性などを踏まえて、世界トップクラスの運営能力を認められた協会に資格が与えられる。日本以外の協会は、ホームユニオンと呼ばれる伝統国を中心とした強豪国ばかりだが、称号だけではなくワールドラグビーの中での重要な会議、決議に参画資格を持つという点では重要な意味のある決定だった。世界の流れ、変化の中で、日本はどう存在感をアピールし、高めていけるのかを模索し、挑戦してきた。その大きな成果の1つが、このハイパフォーマンスユニオン入りだった。
「ここは非常に長い期間かかって、ようやく実現できました。本当はもっと早く入りたかったのですが、実現できたのはワールドラグビーとしてやはり10か国だけじゃない国にもチャンスがあるという、残りの数10か国に対してのメッセージでもあると思います」
このようなラグビー界の機運の中で、専務理事がワールドラグビーが本気で変革を求めていると感じたのは、日本のハイパフォーマンスユニオン入りでも、新国際大会へ参入が濃厚だということでもなかった。今回のW杯でもポルトガルが、ベスト8入りしたフィジーからW杯初勝利を挙げ、日本とも対戦した初出場のチリが好ゲームを見せるなど、中堅国、新興国の躍進が見られたが、それをどう一過性のものにしないかがポイントだという。
「いつも問題になるのは、今回のポルトガル、あるいはチリ、前回のウルグアイやジョージアらは、W杯が終わった直後には必ず評価されてきましたが、結果的に4年間いつも変わらなかった。つまりW杯での躍進が4年後に繋がっていないという現実があります。だからこそ、今回のW杯でそれを変えることが重要でした。その中で例えば(新大会の)12か国に日本が入るとか入らないことじゃなくて、12か国に入るために、次の12か国がどうなるのかがはっきりしたことが重要だと思います」