ラグビー日本戦が「少し怖い」 アルゼンチン敏腕記者、10.8決戦へ母国の現状を危惧「一体何が…」
ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会は、プール戦最終週を迎えようとしている。すでにイングランドら決勝トーナメント進出を確定するチームもいる中で、日本代表は8日にナントでアルゼンチン代表とプールD突破を懸けた大一番を迎える。実力が逼迫する予断が許されない両チームの激突を、アルゼンチン出身の敏腕記者はどう見るのか。30年以上にわたりラグビーの取材を続け、W杯でもメディア担当を担うなど世界のラグビーに精通するフランキー・ディゲス記者に、“ナント決戦”の行方について話を聞いた。(取材・文=吉田 宏)
30年以上ラグビーを追う敏腕記者をW杯会場で直撃
ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会は、プール戦最終週を迎えようとしている。すでにイングランドら決勝トーナメント進出を確定するチームもいる中で、日本代表は8日にナントでアルゼンチン代表とプールD突破を懸けた大一番を迎える。実力が逼迫する予断が許されない両チームの激突を、アルゼンチン出身の敏腕記者はどう見るのか。30年以上にわたりラグビーの取材を続け、W杯でもメディア担当を担うなど世界のラグビーに精通するフランキー・ディゲス記者に、“ナント決戦”の行方について話を聞いた。(取材・文=吉田 宏)
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「おい、我が友! 元気だったか!」
こんな声と同時に、熊のような図体でがっしりとハグされる。4年ごとの変わらない再会の儀式だ。今回の手荒い歓迎は、9月22日、フランス中部のサンテティエンヌでのアルゼンチンvsサモアのプレスルーム。中年オヤジと抱き合うのは、この男とだけだ。
いつも飾らない、だが、自国の代表「ロス・プーマス」を中心に楕円球へ情熱を注ぎ続ける男。それがディゲス記者の印象だ。だが、世界のどのラグビースタジアムでも、彼を「ディゲスさん」と呼ぶ記者はいない。老いも若きも、誰もが「フランキー!」と声を掛け、握手し、ハグをする。今回も、いつも通りフランキーという呼び名で書かせていただく。
フランキーと、日本戦について珍しく真面目に話したのは、9月30日にナントで行われたアルゼンチンvsチリのプレスルーム。今は自国にとらわれず南米のラグビーに情熱を注ぐフランキーにとっては、母国と同時にW杯初出場となるチリの取材も重要だという。そんな南米愛に溢れた男が、こぼしたのが「日本戦は少し怖いね」という言葉だった。
「もう少し話を聞かせてくれないか」と頼んで、試合後に、このベテラン記者が「10.8決戦」をどう見ているのかを聞いてみた。最初に、単刀直入に聞いてみた。
「フランキーは、どちらが勝つと思うの?」
少し沈黙を置いてから、フランキーはこう語り始めた。
「私の感情としてはアルゼンチンだ。だが、アルゼンチは、ここまでの3試合では、いいゲームをしていないと感じている。ここがすごく難しいところだが、私は、今の彼らはいいラグビーをしているとは思えない」
思わず頷いてしまう。昨年7月にはスコットランドとの3連戦を2勝1敗と勝ち越し、8、9月のラグビーチャピオンシップ(南半球4か国対抗)では、最下位に終わったがニュージーランド、オーストラリアから1勝を挙げた。そして11月の代表戦では敵地トゥイッケナムでイングランドを1点差で凌いで、今年も7月にオーストラリアを再び撃破。南アフリカとも1点差の死闘を演じてきた。“南米の雄”ではなく、世界の猛獣となりつつある期待感の中で迎えたフランスでのキックオフだったが、初戦でイングランドに10-27と屈してから、どうも開幕前の獰猛さが感じられない試合を続けてきた。