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W杯4強や8強の目標は「結局負けて終わるじゃないですか」 ラグビー稲垣啓太、笑わない男のシンプルな本質

4年前のW杯で感じた熱量を語る稲垣【写真:近藤俊哉】
4年前のW杯で感じた熱量を語る稲垣【写真:近藤俊哉】

4年前のW杯日本大会で感じた熱量

 2大会続けて出場したことでワールドカップの力というものを感じてきた一人でもある。日本開催となった前回大会、ブレイブブロッサムズの活躍に日本列島は歓喜し、ジェイミー・ジョセフHCが掲げた「ONE TEAM」は流行語年間大賞に選ばれたほどだ。ファンの声援が力となったばかりでなく、ラグビー人気の急激な高まりは予想を超えていた。

「日本代表が勝つにつれて本当に多くの人がどんどん応援してくれるようになりましたし、その熱量を身近に感じることができました。近くの公園でサッカーのユニフォームを着て遊ぶ子どもたちをよく見かけていたんですけど、ワールドカップの後はラグビー日本代表のジャージーを着ている子どもたちが結構いました。日本でその光景を見ることができたのは凄く嬉しかったですね」

 もしワールドカップで優勝を成し遂げれば、想像をはるかに超える反響を呼ぶに違いない。日本代表のみならず、リーグワン、学生ラグビーなど日本ラグビー全体を盛り上げていくこともできる。5月には日本ラグビー協会がワールドラグビー加盟協会における最上位層となる「ハイパフォーマンスユニオン」に入ることが決定した。世界から評価を受けているこの流れをさらに加速していくためにも、今回のフランス大会は非常に重要になってくる。

 現在、世界ランキング14位(9月4日時点)の日本代表は今回、1次リーグでチリ代表、イングランド代表、サモア代表、アルゼンチン代表と対戦することになる。イングランド、アルゼンチンは日本よりもランキングは上だ。決勝トーナメントに進出するには上位2位までに入らなければならず、最低限この2チームのどちらかには勝っておく必要があるだろう。この難しいグループを突破すれば勢いも生まれるはずだ。

 頼もしいことに33歳の稲垣はキャリアを積み重ねてきたうえでプレーにおいてある“変化”を感じているという。

「経験から基づいたプレーの予測、つまり次、何が起こるのかというのは大体分かるようになってきました。自分の経験則に当てはめてみて、こういうシチュエーションになったら多分味方はこう動く、相手はこう動く、あそこにスペースができるはずだから自分がどういうプレーをすればいいかってパッと出てくるようになっています。プレーのムダが省かれて、次のプレーを予測するスピードが上がっている感覚。ここは自分の成長を実感できている部分でもあります。

 オフフィールドでチームをつくっていく過程においても、そういったところで力になれるんじゃないかなとも思っています。いい準備をして大会に臨みたい」

 チームづくりにおいても積極的に関わっていかなければならない立場。優勝という目標に向けて、まさに「ONE TEAM」となって戦っていく覚悟はできている。

 最高の準備をして、最高の大会にするだけ。優勝という大望を成し遂げるべく、実行に移すだけ。稲垣啓太にはやるべきことが、はっきりと見えている。

(二宮 寿朗 / Toshio Ninomiya)

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二宮 寿朗

1972年生まれ、愛媛県出身。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2006年に退社後、「Number」編集部を経て独立した。サッカーをはじめ格闘技やボクシング、ラグビーなどを追い、インタビューでは取材対象者と信頼関係を築きながら内面に鋭く迫る。著書に『松田直樹を忘れない』(三栄書房)、『中村俊輔 サッカー覚書』(文藝春秋、共著)、『鉄人の思考法~1980年生まれ戦い続けるアスリート』(集英社)、『ベイスターズ再建録』(双葉社)などがある。

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