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世界記録保持者に挑んだアジア人 新記録より勝利を優先、棒高跳びフィリピン人の熱い世界陸上

19日から熱戦が繰り広げられたブダペスト世界陸上は、27日(日本時間28日)の競技をもって幕を閉じる。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。

男子棒高跳びで銀メダルを獲得したアーネストジョン・オビエナ【写真:ロイター】
男子棒高跳びで銀メダルを獲得したアーネストジョン・オビエナ【写真:ロイター】

ブダペスト世界陸上連載「陸上界の真珠たち」第20回

 19日から熱戦が繰り広げられたブダペスト世界陸上は、27日(日本時間28日)の競技をもって幕を閉じる。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。

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 第20回は、26日(同27日)の男子棒高跳びで銀メダルを獲得したアーネストジョン・オビエナ(フィリピン)が登場する。自身の持つアジア記録に並ぶ6メートル00で2大会連続のメダル獲得。最後は世界大会2連覇中だった世界記録保持者アーマンド・デュプランティス(スウェーデン)との一騎打ちだった。敗戦のリスクを冒しながら挑んだ最終試技。記録より勝利を目指す姿勢がアジア人ジャンパーのさらなる可能性を感じさせた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)

 ◇ ◇ ◇

 固唾を飲んで見守るブダペストの観客が一気に沸き上がった。

 オビエナの2本目は、アジア人では自分しか到達したことがない6メートルの大台。軽く息を吐いてから棒を構え、軽快に助走をつけた。しなりを効かせて舞い上がると、バーはほとんど揺れない。アジア記録タイだ。小さく右拳を握り、控えめに喜びを表現。先にクリアした首位デュプランティスに追いついた。

 他の3選手が失敗し、前回大会を1つ上回る銀メダル以上が確定。ここから絶対王者との一騎打ちが始まった。6メートル22の世界記録を持ち、2021年東京五輪、22年オレゴン世界陸上で世界大会2連覇中の“超人”への挑戦。アジアNo.1ジャンパーとして果敢に立ち向かった。

 6メートル05の1回目を失敗。対するデュプランティスは一発でクリアした。3回連続失敗なら競技終了。残すは2回。オビエナは相手を上回る6メートル10を選択した。並ぶだけでは意味がない。アジア新記録を狙うより、敗戦のリスクを冒し、王者を倒すことにこだわった。

「それが今日、僕がしたかったことだ」

 6メートル10も成功させた王者に対し、オビエナは2回連続で失敗。アジア人初の金メダルには届かなかった。悔しさを抱きつつ、何度も世界記録を更新してきたライバルに対する敬意は大きい。

「アーマンドがいなければ、僕はここまで懸命に自分を追い込むことはなかったと思う。彼が存在してくれるのは良いことだけど、勝つのが難しくなっちゃうのは悪いことだね(笑)。でも、彼がこのスポーツのためにしてきたことはアメージングだよ」

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