「過去のW杯ではなかった」 4度目出場の堀江翔太、ラグビー日本代表「33分の19」に期待の理由
ムーア離脱で失った日本代表LO勢の高さ
15日のメンバー発表に伴い、様々なハプニングが起きたが、その中でも最も深刻なのはLOムーアの緊急離脱だ。15日のW杯メンバー発表時点では選ばれていたが、18日に怪我による辞退が発表された。前回W杯では、無名の存在からタックルを中心としたワークレートの高さで日本の躍進を後押し。その仕事ぶりは、今季の代表戦でも実証してきた。
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先発した4試合でも、チーム内でのムーアのタックル成功数はオールブラックスXV第1戦3位(12回)、同第2戦1位(12回)、サモア戦2位(10回)、フィジー戦1位(16回)という数値を残している。10回成功すれば評価されるタックルだが、常に2桁以上のタックルを決めて、防御の要と位置付けられてきただけに、ムーアの不在をどこまで現行のメンバーがカバーできるかは大きなチャレンジだ。
ムーアは、タックルに加えて空中戦でも欠かせない存在だった。195センチという身長は、LOとしては世界基準ではない。だが、跳躍力と瞬発性を生かしたジャンプは、日本伝統のタイミングとスピードでボールを確保するラインアウトには重要な存在だった。201センチのワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)との連携による高さとタイミングのバリエーションで、ムーアに負う部分が大きかっただけに、その離脱の影響は否めない。
ムーアを失ったことで日本代表LO勢の高さは、ディアンズを除くとヘル・ウヴェ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の193センチ、サウマキ・アナマキ(神戸S)の189センチ、FL兼務のジャック・コーネルセン(埼玉WK)の195センチという顔ぶれだ。世界のトップ8以上を目指すチームの高さとしてはかなり厳しい状況で、前回大会までと同様にタイミングを駆使した空中戦を強いられることになる。
首脳陣も“高さ”への対策を打ってきている。渡欧当日に発表されたバックアップメンバー3人はファカタヴァ、FL下川甲嗣(東京SG)に加えて、今季は代表に呼ばれていないLOサナイラ・ワクァ(花園L)を呼び戻している。202センチ、120キロの大型LOは、昨秋のオーストラリアA代表との第1戦で負傷退場してから代表を離れていた。リーグワン終盤の4、5月の公式戦には出場していたにもかかわらず、離日直前のまさに緊急招聘は、現在リハビリ中のディアンズの回復が遅れるか、さらに負傷した場合に、どうしても200センチ級の選手を確保しておきたいという思惑が反映されている。
しかし、ワクァの突然の招聘は、メンバー選考の一貫性の難しさも露呈する。伏線としては、新型コロナウイルスによる代表活動の出遅れと、スーパーラグビーに日本から参入したサンウルブズが2020年シーズンを最後に脱退したことがある。そのために、代表クラスの選手の強化・育成に充てる時間と環境の減少という、コーチ泣かせのハンディキャップの中で日本の強化が続けられてきた。
その一方で、どこまで継続的な選手の強化という投資を続けて、成長という配当を得られたかは、W杯後の検証も必要だろう。最終選考で落選した山中亮平やテビタ・タタフ、昨秋は代表司令塔争いを演じていた山沢拓也(埼玉WK)らの落選には、ゲームでのパフォーマンスも大きく影響している一方で、それ以外の理由も聞こえてくる。