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ラグビーW杯まで1か月、日本代表の“精巧なパズル”は完成するか 国内前哨戦「1勝4敗」を検証

日本の攻撃の全体像を見極めるまでには至っていない

 ここまでの5試合を観てくると、段階的にジャパンらしいアタックは見えてきている。だが、それは試合ごとにパズルの絵が見えてきているものの、まだ断片的で全体像を見極めるまでには至っていないという印象だ。確かに、その絵を見せるのは今ではなく、9月10日のチリ戦からだ。残り1か月でパズルのピースを埋める作業を進めるしかない。

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 だが、その一方でスコアした後半31、37分は、対戦相手が28点のリードと、慣れない高い湿度の中での試合で運動量が落ちている状況でのスコアだ。むしろ、序盤の攻防でもっと対戦相手を走らせ、消耗させて、残り10分よりも早い時間帯から反撃を仕掛けるのがジャパンの戦略だろう。2点差で敗れたサモア戦も同様に、相手の疲労から追い詰めながら、結果的に逆転までに至らなかった。

 フランスで開催されるW杯本番では、日本でのゲーム以上に天候による消耗が減るのは明らかだ。その中で、たとえ得点に至らなくても、前半からランとキックを駆使してさらに相手を揺さぶり、疲労させるような試合運びができなければ、アルゼンチンら強豪相手に日本の勝ちパターンに持ち込むのは容易ではない。

 これまでのコラムで何度も触れてきた日本の精巧な組織プレーの完成度に関しては、ジョセフHCのコメントが苦境を物語る。

「サモア戦同様にレッドカードが出てしまうと、(選手が1人少ないために)チームが考えてきたストラクチャー(ゲームの構造)を失ってしまう。1週間準備してやってきたものを変更して、調整しないといけない状態になってしまった」

 指揮官が嘆くように、この試合のゲームプランが修正を余儀なくされたことも痛かったが、さらに悩ましいのは、日本代表のように他の強豪国に組織プレーや緻密な戦術で勝負を挑むチームにとっては、W杯へ向けた準備段階のゲーム2試合で合計120分以上も14人での戦いを強いられたことだろう。組織プレーの完成度を試し、課題を見つけ出すためには大きな時間の損失だった。フィジー戦の日本のメンバーを見ると、かなりの選手がフランスでの本番で起用される顔ぶれだろうと推測される一方で、ジャパン流の精密機械のような組織プレーはまだ完成とは呼べない段階だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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