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「センスがない」と自覚、角田夏実が究めた異色の柔道 「分かっていても防げない」必殺技の原点

笑顔が絶えない印象の角田だが本人曰く「めちゃめちゃネガティブ」。試合に向けた準備に余念がない【写真:積紫乃】
笑顔が絶えない印象の角田だが本人曰く「めちゃめちゃネガティブ」。試合に向けた準備に余念がない【写真:積紫乃】

自分の長所を磨いて世界の頂点に立てることを証明

 柔道に限らず、どの競技であれ、得意と不得意の分野が選手にはある。不得意とする分野で努力して苦手なところを減らして総合的に力を高める方向を探る選手も少なくない。

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 ただ角田はそうではなかった。むろん、過去には「立ち技にも力を入れたい」と大会後に語ることもあった。それでも最終的に角田が選んだのは、自分の強みを伸ばすことだったのではないか。

 角田も「そうですね」とうなずく。

 自分の得意なところを磨き上げる。そのスタンスを象徴するのが巴投げかもしれない。

 巴投げの基本の流れは相手を前に崩して、自身は真後ろに身を倒しつつ、片足の足裏を相手の腹部や腿の付け根に当てて、押し上げるように真後ろに投げる。

 角田の場合、片足の場合があれば両足を相手に当てる場合もあるのをはじめ、かけ方にさまざまなバリエーションがあることが試合を見ていると分かる。1試合の中でも、投げられない時はバリエーションを変えつつ、技をかけている。

「けっこう腕っぷしが強いので、巴投げをかけるにも合っていると思いますし、組手も鍛えながら伸ばしてきました」

 自分の長所を理解し、そこをとことん究めれば相手の対策を乗り越えられる。世界に通じる、頂点に立てることを角田は示している。

 世界選手権3連覇、すべての試合で一本勝ちを収めた角田は、パリ五輪代表を現実のものにした。

「よく『3連覇していても、あまり嬉しそうじゃないですね』と言われるんですけど、ほっとしているくらいしかなくて。オリンピックで優勝しないと、この3連覇も意味ないのかなって自分では思っています。しっかり準備して、優勝を目指して頑張りたいです」

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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