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ラグビーが「難しくなっている」 1試合で6回のTMO、リーグワン名勝負から考える最適な運用法

公平な判定の重要性とファン目線で見たラグビーの醍醐味

 選手、チーム側からのアピールによるTMO実施に関しては、「ニュージーランドで一時導入されたと記憶しているが、苦戦している側のチームがゲームの流れを止めたい、変えたいという目的で、プレーを止めるためにTMOを求めるなど、本来とは違う目的で使われることもあり長続きしなかった。どのような条件で導入できるか検討の余地はある」と指摘する。

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 1会場でのTMOで設置するカメラの台数については、プレーオフに入り従来の数台から10台を超える数に増やしていたが、単純計算でピッチの四隅に配置しても2、3台という数や、準決勝での映像が遮られた状況を考えると、やはり改善の余地はあるようだ。

 このような状況を踏まえると、TMO自体は日本でも定着している一方で、整備や改善が必要な部分も少なくない。

 何度も触れてきたように、プロ化が進む中では、より正確で公正なジャッジを求めるのは自然の流れでもある。だが、プロの興行として、つまり観客にチケットを買ってもらい、質の高いゲームという商品を提供する観点では、TMOを適用する善し悪しも変わってくるだろう。

 例えば野球やテニス、バレーボールのように攻守の交代などでゲームが随時止まる競技では、ビデオ判定でプレーが止まることも不自然ではないかもしれない。だが、ラグビーやサッカーのように、刻々とプレーが動き続け、試合状況が変化していく競技では、あまりにも頻繁にゲームが止まることにストレスを感じるファンも少なくないだろう。

 ラグビーには陣地取りというゲームの性格もあるため、敵陣へと徐々に攻め進みながら、攻防の流れの中でトライに結実するというカタルシスも魅力の1つだ。TMOでプレー自体や観戦する集中力に水を差されることで、盛り上がりや興奮を削がれてしまう側面もあるはずだ。いい商品を顧客に提供するという観点からの検証も必要になる。

 プロ選手、チーム、そしてゲームを司るオーガニゼーション=協会、主催者としてラグビーを見れば、より正確、公平な判定は重要だが、それがこの競技すべての価値観ではない。ファン目線で考えると、試合の流れが何度も寸断されることなくトライへとプレーが続くことも、ラグビーの醍醐味なのは間違いない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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