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ラグビーが「難しくなっている」 1試合で6回のTMO、リーグワン名勝負から考える最適な運用法

リーグワンのTMOは「カメラの数が十分ではない」

 映像で具体的に確かめることができるのは、選手にとっても納得材料、説得材料になるのは間違いない。その一方で、同じ4強入りをしたチームの中でも、全く異なる価値観もある。終了直前のプレーがTMOでノートライと判定されて準決勝で敗退した東京SGの田中監督は、こんな視点で話してくれた。

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「個人的にはTMOにあまり依存せず、レフェリーの目視での判断があっていいと思います。結果的に判断ミスがあったとしても、です。確かに勝ち負けにかかわる重要なところですが、ラグビーという競技はレフェリーの判断で進められるものですから。そこに、ラグビーというゲームの面白さもあると考えています」

 同じく4強入りしたチームのあるGMからは、リーグワンでのTMO導入がハード面で未だに未整備だという声も聞いた。

「本来は様々な角度からの映像で確認するはずのTMOだが、準決勝もそうですが、そもそもカメラの数が十分ではない。TMOを導入するのであれば、必要な設備を整えるべきでしょう。もしカメラの数が不十分なら、ローカルルールとして、トライなどを確認するための追加の要員をゴールライン付近にでも配置してもいいんじゃないか」

 この発言には伏線がある。準決勝での問題のプレーでは、TMO用のカメラの前に他の放送クルーがいて、東京SGの選手がインゴールへとなだれ込むシーンの一部が遮られていたのだ。このような状況は、海外のリーグではなかなか見る機会はない。主催者側の準備不足が理由か、中継局のカメラポジションの不適切さなのかは当該者同士が確認、フィードバックするなどの撮影ルールの改善が必要だろう。せっかくTMOを用意しても、人為的なミスでその映像が見られず、それをカバーするカメラもないという事実は今後の検討課題になる。

 その一方で、テストマッチレベルの試合では、チームが事前にTMOカメラの位置を把握して、際どいシーンでは選手がカメラの撮影を塞ぐような位置に立つよう指示をされているとも聞く。

 様々な立場でTMOの評価、見方は異なるが、共通して危惧していることもある。日本人の勤勉さ、律儀さに加えて、少しネガティブに見れば長いものに巻かれてしまう気質も影響しているのだろうが、手元にある“道具”にどうしても頼りがちになるという危うさだ。本来は自分自身の判断を手助けする道具であるはずのTMOに依存してしまい、主従逆転してしまっていると感じるのは穿った見方だろうか。

 多くのレフェリーが自分自身の目と判断力、知識をフル活用して試合に臨んでいるのは間違いない。だが、もしどこかに「最終的にTMOでの判断があるから」という意識が潜んでいれば、レフェリー自身がプレーを見定める能力を磨くことのマイナス要素にならないか。そんな声は、今回のプレーオフ以前から現場の選手、チーム関係者から何度も聞いてきた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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