ラグビーが「難しくなっている」 1試合で6回のTMO、リーグワン名勝負から考える最適な運用法
プロ化が進むなかで高まった誤認が許されない風潮
TMOは、レフェリーと両サイドのタッチライン際に立つ2人のアシスタントレフェリーが確認できないプレーを、複数のカメラが補い、判定を助けるための“第4の目”だ。ビデオでの確認もレフェリー(経験者)が担っている。ワールドカップでは2003年大会から採用され、日本では2014年シーズンのトップリーグから導入されている。一方で、設備や予算面を理由に社会人下部や学生リーグでは現在も導入されておらず、世界的にもトップレベルのプロリーグでの使用が中心だ。
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なぜTMOが導入されたかは、先の田中監督のコメントに物語られている。指揮官が「ラグビーが難しくなっている」と語ったように、プロ化が進むなかで誤認が許されない風潮が高まり、同時にゲームがより組織化、複雑化して、密集の中でのプレーなど見極めが難しい状況が増えている。今回のように映像として明らかに撮影されていないものに関しては、憶測や「たぶん」では判定できないことも困難さを助長する。そしてミスジャッジ回避と同等か、それ以上に世界規模で深刻化する頭部への衝撃など、安全対策の上でも欠かせないツールとなっている。
東京SGで過去に主将も担い、日本代表でも活躍するSH(スクラムハーフ)流大(ゆたか)は、渦中のインジュアリータイムのシーンを密集に加わりながら目の当たりにしていた。
「僕の真横でグラウンディングはしていましたが、レフェリーからもアシスタントレフェリーからも見えない。カメラにも映っていないので、それはもう、そういうルールというかレフェリーの判断がすべてだと思うので、何も言うことはないです。残念ですけれども現状のルール、TMOのシステムであれば(判定は)正しいと思います」
流自身はトライと確信していたが、ルール上はレフェリーのジャッジを尊重するしかないという判断だ。その一方で、この試合での合計6回のTMOは平均13分に1回はビデオチェックのためにプレーが数分間止められたことになる。TMOの場合、正確性を期すために様々な角度からの映像を、スローや通常速度、クローズアップなどで何度も見直すため、テニスやバレーボールで導入される「チャレンジ」などのビデオ判定よりもはるかに時間がかかる。問題のシーンでのTMOによるチェックには6分をかけたが、所要時間としては平均か、やや長かったという印象だ。
この試合でのTMOは異例の多さではあったが、前日の準決勝第1試合でも5回行われている。参考までに触れておくと、S東京ベイVS東京SGと同日に行われた南半球最高峰リーグ「スーパーラグビーパシフィック」ACTブランビーズVSオタゴハイランダーズのTMO回数は2回。これが平均的な回数と考えていい。