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儚き10代のサッカーセンス 年齢を重ね不意に消える「上手さ」、逸材の未来を分けるものとは

ドリブルやボール技術だけならメッシと同レベルの選手はいる

 無名のチームでも、確実に人材はいる。例えばスペインを代表したストライカーであるダビド・ビジャは、17歳になるまで無名のラングレオというクラブでプレーしていた。地元の有力クラブ、オビエドのトライアウトを受けたにもかかわらず、落第している。

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 ビジャは自らを信じ続け、その道を開いたのだ。

 結局、上手さを磨き続けたものしか、プロの世界では生き残れない。「上手い」。それはユース年代では甘い誘惑である。

「メッシは上手いよ。でも、ドリブルやボール技術だけの話をすれば、例えばスペイン代表のヘスス・ナバスは同じくらいのレベルにあると思う」

 かつて、FCバルセロナに在籍していたブラジル代表ダニエウ・アウベスは、必聴のメッシ論を語っていたことがある。

「ただ、メッシのほうがずっと“大人”というのかな。彼は1つのプレーに満足しない。ヘディングだって、FKだって、なんだってできる。彼はトレーニングの中で、常に一番、完璧を目指してきた。向上心が凄いんだよ。そのエネルギーが周りを巻き込み、物言わずとも中心になっていった。世界最高の選手になったのは必然と言えるだろう」

 メッシは、ミカエル・ラウドルップやルイス・フィーゴのような、過去にバルサに在籍した選手の技(ループやフェイントなど)をよく使ったという。柔軟に技を取り込むことができた。最も触発されたのが、同僚だったロナウジーニョだったと言われる。また、MFシャビ・エルナンデスの影響も強く受け、中盤に落ちてゲームメイクする時の動作パターンはかなり似ている。

 メッシは、楽しむ気持ちを戦闘力に換えられる選手で、そのために際限なく技術を上達させてきた。負けることを心から憎むからこそ、自らのドリブルやパスを磨き、えげつないほどに相手の弱部を察知し、そこを突き崩した。

 自らと向き合ってきた選手だけが、上手さを享受できるのだろう。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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