サッカークラブが若者の果物離れに一役 購入量激減のりんご、青森で始まった新たな地域貢献
選手たちも公認スポーツ栄養士の講義を受講、果物の重要性を実感
「まずは選手自身に、スポーツ栄養とりんごについて知ってほしい」と、青森県側はシーズン初めの2月、栄養セミナーを開催。2回にわたるセミナーには、山本富士雄新監督以下、選手一同が参加。サッカーやラグビーの国内トップチームの栄養サポート行ってきた、橋本玲子公認スポーツ栄養士による講義を受講した。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
「今のチームは地元出身以外の選手たちが非常に多いので、選手たちにも、青森りんごを知ってもらえるよい機会になりました。今後はサッカー教室などで、スポーツをするうえでりんごを食べるとよい点や、積極的に食べよう、という呼びかけをしていただけたらうれしい」(高田さん)
チームの選手会長である高木輝之は、埼玉県出身。国士舘大学卒業後、入団し、今季で5年目になる。
「今回の栄養セミナーは、選手たちにとっても有意義な時間だった。自分たちは、普段、仕事をしながらサッカーを続けているし、僕自身も年齢も重ね、疲労回復は課題。コンディショニングにつながる、果物の栄養価やカロリー、そして摂るタイミングを具体的に知ることができてよかった」(高木)
ブランデュー弘前の選手たちは、平日の午前中に練習を行い、午後はそれぞれの職場に向かう。放課後児童支援員として働く高木は、仕事の時間外にもサッカー教室を開催。子どもたちにサッカーを教える活動をしている。
「今回のセミナーを受講し、試合前の準備や試合後のリカバリーという観点から、果物や食事の大切さを子どもたちに伝えたいと思いました。まずは、自分のスクール生に直接話をしたり、SNSで発信したりすることから始めてみます」
今年4年目になる小野春輝は、弘前実業高校卒業後、入団。子どもの頃からブランデューの試合を観て育ち、「いつかブランデューの選手たちのようになりたいと思っていた」という、数少ない地元育ちの選手だ。
「元々、果物を食べることはすごく大事だと思っていましたが、これまで、りんごをスポーツ栄養と結び付けて考えたことがなかった。栄養学としての知識は無いに等しかったので、今回、具体的に学ぶことができてよかった」
小野の父親の実家はりんご農家を営む。しかし、今回のセミナーで初めて、果物離れの深刻さを知った。
「僕自身、旬の時期は、毎日食べるほどりんごは身近です。りんごの消費量が年々、減少していると聞いても、ピンときていなかった」
小野は昨年、青森県を襲った集中豪雨による被害についても触れた。
昨年8月、大雨による河川の氾濫により青森県内では多くのリンゴ園が冠水。県の発表によると、リンゴ関係の被害総額は、県内10市町村で約21億円にも上った。弘前市内とその周辺町も、多くの木が損傷し、果実廃棄の被害が出た。
「何かできることはないかと考え、ボランティアとしてりんご園に足を運びました。すべてが無駄になってしまった光景に切ない思いありましたし、片付ける、と言葉にしたくないほど胸の痛い作業でした」
りんごのよさは、自分が口で説明するよりも、実際に食べてもらうほうが伝わると思う、と小野。「子どもたちにどう使えていくかは、これから考えたい。何より、自分でりんごを切って、食べることを一緒に体験するのが一番かなと思います」