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選手の失敗は「自分の責任」 部活指導の外国人監督、徹底して高校生を擁護した理由

徹底してネガティブな言葉や叱責を排した指導

 前監督のペイトンは、徹底してポジティブに毎日のプレーを楽しむ哲学を残していった。

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「とにかく君たちは、プレーを楽しまなければいけない。ミスを怖がるのではなく、リラックスすればするほど良いプレーができる」

 ドイツでの現役生活を終えてから「ファーダン・サッカー・スクール」を主宰していた上船も、子供たちを褒めて盛り上げるタイプだったが、それでもペイトンのネガティブな言葉や叱責を一切排した徹底ぶりには驚かされた。

「ジェリー(ペイトン)は、選手たちが失敗した時は、心から自分を責めているんです。プレーの指示にはブレがなく、必ず『ここはこうしてください』と明言し、それで結果が出なければ指示を出した自分の責任だと謝る。だから自分が指導している選手の欠点などを指摘されれば、我がことのように怒るんです」

 多くの日本の指導者は、まず選手の課題を指摘しがちだが、ペイトンは「君のここがダメだ」などとは一度も口にしたことがないという。逆に上船は、その点で注意されたこともあった。

「どうしてトシが信じてあげないんだ。信じてあげていなければ、それは選手だって感じ取る。コーチが信じてあげなければ、選手たちは自信を持ってプレーできないぞ」

 負けた試合の後には、敢えて良いパフォーマンスをした時の動画を流し「オレたちは、こんなに素晴らしいフットボールをしているじゃないか」と勇気づけた。

 改めて上船は、創設3年目で高校サッカー選手権兵庫県予選の決勝まで勝ち上がった快進撃は、ペイトンなくしてはあり得なかったと振り返る。

「ジェリーのような監督だから、選手たちは思い切って挑戦できたし、監督のために頑張ろうと思えた。それにトップシーンのゲームをゴールマウスから見続けた戦術眼は、やはり頭抜けていました」

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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