井上尚弥が動かす日本人ボクサーの主流 激増した統一戦、現代は「本物を追い求める」
ボクサーに求められるものは、時代とともに変化している。前世界バンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)は、13日に4つの王座返上とスーパーバンタム級転向を正式表明。4人(延べ5人)の現役世界王者を倒したバンタム級に別れを告げた。ビッグマッチの連続で盛り上がる日本ボクシング界。背景には常に強者を求めるモンスターの影響があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
世界王座統一戦が増えた日本ボクシング界、井上尚弥「いい流れになっている」
ボクサーに求められるものは、時代とともに変化している。前世界バンタム級4団体統一王者・井上尚弥(大橋)は、13日に4つの王座返上とスーパーバンタム級転向を正式表明。4人(延べ5人)の現役世界王者を倒したバンタム級に別れを告げた。ビッグマッチの連続で盛り上がる日本ボクシング界。背景には常に強者を求めるモンスターの影響があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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マイクを通じて聞こえる井上の声は、いつも通りよどみなく堂々としていた。13日の会見。自身が日本ボクシング界に与えた影響について口にした。
「本来の日本ボクシングの形というのは、チャンピオンがランキングの選手と対戦をして、防衛していくものだったと思います。でも、ボクシングには4団体あって、チャンピオンが4人いる。その中で自分は本当のNo.1を証明したいと思い、ここまでやってきました。
常々『統一戦』という言葉を口にしながらやってきて、それが形となってきた。周りのチャンピオンもそういう気持ちになって統一を目指す、本物を追い求めるという流れになってきたので、凄く自分の中ではいい流れになっているのだと思います」
同じ階級に複数の王者がいれば、誰が一番強いのかわからないという声もある。井上自身、ベルトを統一したいと発信することは、他の日本人選手たちにプレッシャーをかけるという意味合いもあったそうだ。実際、他の選手たちから「自分も」という声を多く聞く。
かつては防衛回数を重ねることが一つのステータスだった。時は流れ、複数階級を制することが注目を浴びるように。階級制のスポーツで、より重い相手に勝利することは至難の業。ただ、過去には世界ランクが高くない挑戦者との防衛戦を重ねたり、世界ランカー同士による王座決定戦で王者と対戦することなくベルトを奪ったりする選手もいる。
決して、歴代の名王者たちが残した偉業の数々を否定するわけではない。交渉の事情で強者との対戦が実現できないこともある。その中で、井上が歩んだ道の凄さがどうしても際立つのだ。