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ドイツなら指導側が「クビ」 高校サッカーのロングスロー流行に見る育成環境の問題点

ドイツでは育成の「目的から外れた指導」は許されない

 鈴木氏はドイツでB級から始めて、すべてのライセンスを取得している。

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「それぞれの年代で何が必要なのかを精査して講義が構成されるわけですが、ユース年代までは技術や戦術が優先されるので、コンディショントレーニングも入ってきません。現在ドイツではタスクフォースが結成されて、今後の方針を検討しているわけですが、DFB(ドイツサッカー連盟)は刷新された方針を全国のクラブに伝達する。そして各クラブの下部組織で権限を持つコーディネーターが指導者の橋渡しをするわけですが、例えば抜擢した指導者がロングスローやキック&ラッシュのように目的から外れた指導をすれば、コーディネーターがクビになります」

 高体連では勝つことが最大の評価になるかもしれないが、少なくともドイツではDFBの方針から外れた短絡な手段で勝利を収めても、逆に失格の烙印を押されてしまう。

 日本より明らかに平均身長で勝るセルビアやドイツでも、育成年代でロングスローのトレーニングなど「調べるまでもなく絶対にやっていない」(鈴木氏)のだ。ところが国際舞台に出て武器になるはずもないロングスローを、日本の指導者が目の前の勝利を掴むために競って取り入れている。

 カタールW杯の日本代表26人のうち、高体連出身者は13人。プロができて30年間を経ても、依然として大きな供給源である。日本が本当に世界に迫ろうとするなら、こうして育成段階で勝利至上主義を煽る環境の改善が急務ではないだろうか。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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