ドイツなら指導側が「クビ」 高校サッカーのロングスロー流行に見る育成環境の問題点
ドイツでは育成の「目的から外れた指導」は許されない
鈴木氏はドイツでB級から始めて、すべてのライセンスを取得している。
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「それぞれの年代で何が必要なのかを精査して講義が構成されるわけですが、ユース年代までは技術や戦術が優先されるので、コンディショントレーニングも入ってきません。現在ドイツではタスクフォースが結成されて、今後の方針を検討しているわけですが、DFB(ドイツサッカー連盟)は刷新された方針を全国のクラブに伝達する。そして各クラブの下部組織で権限を持つコーディネーターが指導者の橋渡しをするわけですが、例えば抜擢した指導者がロングスローやキック&ラッシュのように目的から外れた指導をすれば、コーディネーターがクビになります」
高体連では勝つことが最大の評価になるかもしれないが、少なくともドイツではDFBの方針から外れた短絡な手段で勝利を収めても、逆に失格の烙印を押されてしまう。
日本より明らかに平均身長で勝るセルビアやドイツでも、育成年代でロングスローのトレーニングなど「調べるまでもなく絶対にやっていない」(鈴木氏)のだ。ところが国際舞台に出て武器になるはずもないロングスローを、日本の指導者が目の前の勝利を掴むために競って取り入れている。
カタールW杯の日本代表26人のうち、高体連出身者は13人。プロができて30年間を経ても、依然として大きな供給源である。日本が本当に世界に迫ろうとするなら、こうして育成段階で勝利至上主義を煽る環境の改善が急務ではないだろうか。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)