入れ替わりの激しい女子ゴルフ界 時代の変化に適応し続ける36歳上田桃子の「凄み」
伸びた平均ストロークと飛距離…上田の姿に後輩も刺激
コースには、ツアー通算6勝の天沼知恵子もいた。弟子でプロテスト合格を目指す瀬賀百花、今綾奈を連れて観戦。打ちおろしの8番パー4(431ヤード)で、最終組の上田が放った第2打に反応した。
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「えっ、あのピンを狙っていくんだ。凄いな、桃子。ティーショットもよく飛んでいるし」
ピンは左エッジから4ヤードに切られていた。第1打を約280ヤード飛ばしていた上田の第2打は、ピン上7メートルで止まった。グリーンは横に広く縦に狭い形状。オーバーを恐れず、果敢に攻める姿に天沼は感心しきり。その流れでツアー全体のレベルアップについて聞くと、「ネットの普及が大きい」との見解だった。
「今はネットで多くの情報が入ります。スマホやパソコンを開けば、参考になるスイング動画を見られますし、データを集め、強化ポイントを分析することもできます。情報過多になる面もありますが、それをうまく整理できている選手は、どんどん上手くなっていく印象です。私たちの頃は自分の感覚が頼りで、コースで先輩たちのやっていることを見て盗むしかありませんでしたから」
19年前、宮里が注目を集めた後、同学年の横峯さくらが台頭し、1学年下の諸見里しのぶ、上田が続いた。活躍する選手の若年化は始まっていたが、今は「黄金世代」の24歳以下がツアーを席巻。初優勝を飾っても、その後に低迷してシード権を失っていく選手もいる。
文字通り、入れ替わりの激しい時代だが、上田は若手に対抗しながら、「進化」もしている。データがそれを示していた。
伊藤園レディス終了時点での今季平均ストロークは70.9882(全体10位)。昨季の71・0689(同9位)を上回っている。賞金女王になった07年の70.8268がキャリアハイだが、08年以降は71~73台で推移。米ツアーから国内ツアーに主戦場に戻し、辻村明志コーチに師事した14年からは上昇傾向で、17年、19年も70台をマークしている。
ドライビングディスタンスに限ると、記録の残る2017年の241.98ヤードから、今季は245.89ヤードにアップ。辻村コーチも「桃子は年々、うまくなっている」と証言しており、上田のストイックな姿が、同門の吉田優利、松森彩夏やアマチュア選手の刺激になっている。
TOTOジャパンクラシック、伊藤園レディスは、最終日を単独首位で迎えながら後半に崩れて優勝を逃す展開になった。しかし、ツアー全体のレベルアップに対応しながら、進化していくベテランの「凄み」は誰もが認めるところ。メンタル面との課題にも向き合い、残り2戦も上田が輝くことをファンは願っている。
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)