“二世アスリート”が背負う宿命 偉大な父親への敬意と「比較はナンセンス」の本音
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、男子サッカー選手にとって最も近くにいる父親という同姓の存在から受ける影響について。特に元プロサッカー選手だった父を持つ場合、そこには当事者にしか知り得ない様々な想いが交錯しているという。
連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」: サッカー選手と父親の関係
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回のテーマは、男子サッカー選手にとって最も近くにいる父親という同姓の存在から受ける影響について。特に元プロサッカー選手だった父を持つ場合、そこには当事者にしか知り得ない様々な想いが交錯しているという。
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サッカー経験のある父親がいることは、子供にとってアドバンテージだろうか?
イエスとも、ノーとも言えない。
「生兵法は大怪我の基」という。例えば、サッカーをかじった父親の感情むき出しの説教は悪影響でしかない。子供たちは幻滅するだろう。むしろ、知らないことで寄り添うように応援できるかもしれない。
「サッカーは教わるものではないよ。自分で練習するしかないんだ」
リオネル・メッシにインタビューした時、彼は確信を込めて言っていた。
外野が何かをアドバイスし、上手くなれる領域はたかが知れている。特に子供は、プレーしながら上手くなる。気心の知れた友人と技を磨き合ったり、あるいはポジションを争うライバルやなかなか勝てない敵がいたり、プレーの化学反応で上達するのだ。
素人の父親のアドバイスなど期待しているようでは、名選手には到底辿り着けない。
父親自身、「何かを与えられる」と勘違いしないことだろう。それは指導者も似たようなことが言える。サッカーは体操や水泳や陸上のように、1人で極める競技ではないだけに、子供たち自身が集団の中で力を身につけるしかないのだ。
一方で、父親という存在は当然ながら人間として強い影響を与える。
世界サッカー史の伝説と言えるクリスティアーノ・ロナウドは、幼少期に父の影響を受けている。
ロナウドの父は1970年代まで続いたポルトガル植民地戦争に従軍し、心を病んでいたという。帰国後は定職につけず、アルコール浸りになって(戦場で生水を口にするとマラリアなど伝染病の危険があり、ビールを常飲していた)、身持ちを崩していった。母親がクルーズ船の厨房で働き、どうにか生計を立てたが、兄はドラッグ中毒で早くに亡くなっている。