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“最強軍団”NZに7点差惜敗の真相 ラグビー日本代表、数字が示す進化とW杯への課題

驚異的なスタッツを残した姫野和樹

 相手の突破を簡単に許さないダブルタックルも駆使した組織的な防御、そして攻撃面でもキックバリエーションの増加で、相手を崩す場面をオールブラックス相手にも見せた日本代表。ただし、自信が過信にならないことを期待したい。

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 今回接戦を演じたオールブラックスは、先発メンバー15人の総キャップ数は「402」。経験値という点では日本代表の「357」と大きな差はない。しかも、イアン・フォスターHCが「これまで試合経験の少ない選手を選んだ」と語るように、若手選手や怪我などで代表から遠ざかっていた選手も少なくなかった。経験値という面では、402キャップよりも不慣れなメンバーが揃っていたと判断していい布陣だった。

 実際に終了直前の日本のトライシーンでは、自陣ゴール前の密集サイドの防御で2人のディフェンダーは左右の立ち位置を替えている瞬間に、姫野にインゴールに体をねじ込まれる、オールブラックスとしてはあり得ないボーンヘッドを犯している。SH、CTB、FBという布陣のセンターラインに経験値の低い選手を起用したことも、セオリーとしては首を傾げる判断だ。これから対戦するイングランド、フランスは、ともにこの日のオールブラックス以上に強固なセットプレー、そして防御を見せるはずだ。個々の縦に仕掛けてくる突破でも、どこまで日本の防御が喰らいつけるか。10か月後に同じイングランド、そしてアルゼンチンとどこまで対峙できるかの試金石として楽しみな2試合になる。

 個々の選手では、オーストラリアA戦後のコラムではCTBライリー、リーチらの活躍をピックアップしたが、オールブラックス戦で最もインパクトを残したのはFL姫野だろう。

 後半39分の、敵陣ゴール前のラックから相手防御をこじ開けるように押し込んだ4点差に迫るトライも見事だったが、すでに自身のトレードマークとなっているジャッカルで世界クラスを印象付けた。ジャッカルは、グラウンド上にある相手が保持していたボールを、覆いかぶさるようにして奪い取るプレーだが、この試合では何度も姫野の激しいプレーが見られた。前述した前半34分のジャッカルからの見事なターンオーバーに加えて、後半26分にはジャッカルに入った姫野を阻止しようと、神戸でもプレーしたLOブロディ・レタリックが危険なショルダーチャージで一発退場処分。これは10分前に日本のゴール前でのオールブラックスの8次攻撃を、姫野がジャッカルで寸断したプレーがあったことが伏線になっていた。この退場処分が、1人多い状態の日本代表の猛攻に繋がった。

 姫野は4月の左太もも裏の怪我から、オーストラリアA戦でようやく実戦復帰したばかり。そのためオールブラックス戦までは身体的に負担が多いジャッカルには積極的にいかないように意識していたが、最強の相手との対戦で抑えていた“宝刀”を解禁。「今週はブレークダウンでのボールに対して、アタッキングマインドを持って臨もうと思っていました。それがいい結果になったと思う。自分のコンディションはすごく上がっている」と、オールブラックス相手に完全復活の手応えを感じ取ってヨーロッパ遠征に挑む。

 姫野のタックル回数「18」は、この日のオールブラックス選手も含めたなかでリーチの24回に次ぐ多さで、タックル成功率ではリーチを上回る100%を記録している。ランプレーの回数でも、WTBシオサイア・フィフィタ(花園近鉄ライナーズ)に次ぐチーム2位タイの9回、さらにボールを持ってアタックした走行距離51メートルはBKも含めてチーム4位という驚異的なスタッツを見せている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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