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“最強軍団”NZに7点差惜敗の真相 ラグビー日本代表、数字が示す進化とW杯への課題

現在の日本代表は攻撃フェーズを重ねると得点能力が低下

 一方、攻撃に目を転じると、日本代表のトライまでの攻撃回数、キックを使ってのスコアという2つの数値がチームスタイルを浮かび上がらせる。オールブラックスの攻撃でも引き合いに出した攻撃回数だが、日本は奪った4トライのなかで、1次攻撃でのトライが2回、3次、4次がそれぞれ1回ずつだ。比較的少ないフェーズで仕留めていることが分かるのだが、うち2回はキックを織り交ぜたアタックからのスコアだった。裏を返せば、現時点での日本代表は攻撃フェーズを重ねると得点能力が低下すると考えていい。

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 トニー・ブラウン・アシスタントコーチは「前回W杯では日本代表はボールをキープし続けるラグビーがスタイルだった。しかし近年のラグビーは、キッキングゲームを制することが重要になっている」と語っているが、9月にスタートした代表候補合宿では、初日からキックからのアタック、カウンターアタックの実戦形式のメニューに取り組んでいた。キックを織り交ぜた攻撃は、ジョセフHCが就任した2016年シーズンから積極的に取り組んできた戦術だ。だが、従来がハイパントを上げて競り合い、相手にプレッシャーをかける場面が多かったのに対して、今秋のチームはグラウンドを転がすグラバーキックや、相手防御の裏のスペースに落とすショートパントなど、バリエーション豊かなキックを使っている。

 このバリエーションは、オールブラックス戦でも象徴的なアタックを見ることができた。前半37分のチーム初トライだ。グラウンド中盤での右展開からCTBディラン・ライリー(埼玉WK)が蹴り込んだボールを相手がファンブル。そこにSO(スタンドオフ)山沢拓也(埼玉WK)が瞬時の判断で素早く足で2トラップして、そのまま自らキャッチして仕留めている。1次攻撃でトライを奪ったとカウントした40分のチーム2本目のトライも、実は日本代表が連続攻撃からキックしたボールが、相手に当たり跳ね返ったものを、そのまま5人の選手が素早く反応して繋いだものだった。

 このようなトライシーンからは、ジェイミージャパンが発足当時からこだわるアンストラクチャーな(戦術が崩れた)状態からの攻撃力の進化が浮かび上がる。従来以上にバリエーションのある様々なキックで相手にプレッシャーをかけ、ボールを奪えば、日本の強みであるスピードと俊敏さを使って、素早い連係でボールを動かし一気にトライに結び付ける。この筋書きがオーストラリアA戦、そしてオールブラックス戦と、相手のレベルが上がるなかでトライに結び付いていることが注目される。

 ハイパントでも、昨年11月のアイルランド戦などでは、プレッシャーをかける組織的な動きが散漫で、相手に簡単に捕球されて、そのまま有効なアタックに繋げられるシーンも目についた。だが、今秋の代表候補合宿までチームに帯同した田邉淳アシスタントコーチ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が「蹴った場合でもボールを取れた場合、取れなかった場合のシナリオをかなり時間をかけて練習してきた。ボールの奪い返し方、奪い返した後の攻め方も取り組んでいる」と指摘するように、今回のオールブラックス戦では、キックからのトライや、伝統的にアンストラクチャーな攻撃が得意な相手を自由に攻めさせない防御、キック対策が成果を見せていた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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