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“最強軍団”NZに7点差惜敗の真相 ラグビー日本代表、数字が示す進化とW杯への課題

ボール保持やラン回数ではNZに「完敗」

 ラインアウト同様に課題とされてきた反則の多さは、勝者の「6」に対して「12」と大きな開きがあった。FL姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)が「ペナルティーが多すぎましたね。(退場者が出て相手が14人になった)あの後に3連続で反則したことで、相手に時間を使われたり、自分たちの数的優位を上手く生かせなかったのは大きかったと思います。疲れとか、集中力が散漫だったこともあると思います。そこをもっと高めていかないとテストマッチには勝てない」と指摘しているように、相手に攻撃権を与えたこと以上に、終盤の日本代表が追い上げる展開のなかで自分たちの攻撃権を失い、トライチャンスを潰してしまったことが致命的だった。今後対戦するイングランド、フランスというヨーロッパチームに顕著なロースコアでの競り合いに持ち込まれれば、反則が勝敗を分ける可能性があるだけに、今後も重要な課題になるはずだ。

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 ゲームのスタッツを見ると、ランプレーの回数が日本の「87」に対してオールブラックスは「138」と1.5倍で、タックル回数も日本「200」、オールブラックス「98」とかなり攻め続けられているようにも読み取れる。ボール保持時間も日本が「39%」、相手が「61%」と差をつけられた。だが、実際のゲームを見ると、しぶとく相手のアタックに対抗して、スコアまで繋げさせていない日本代表の防御が目立つ。

 開始2分のオールブラックスの連続攻撃では、7次フェーズまで有効なゲインをさせず、最終的にはSH(スクラムハーフ)がキックを選択。34分には日本のキックオフから日本陣22メートルライン内まで攻め込まれたが、9次攻撃を耐えて最後は姫野のジャッカルでボール奪い取った。このようなライン防御では、日本が今季から積極的に取り組むダブルタックルが機能して、相手の連続攻撃を加速させていない。ボール保持やラン回数では「完敗」でも、トライ数では日本の4対5という僅差だったのは、日本の防御が機能してきたためだと評価したい。

 この防御の進化は、オールブラックスが何次攻撃でトライをマークしたかを見ても読み取ることができる。オールブラックスがマークした前半の3トライで、最多の攻撃回数は26分の4次攻撃で奪ったものだ。他の2トライはラインアウトからの2次、1次とほぼ一発で決めている。日本が簡単にスコアされているという見方ができる一方で、相手に攻撃フェーズを重ねられても守り続ける日本の防御の傾向を窺い知ることができる。一発で奪われたトライは、32分のラインアウトのロングスローをCTB(センター)ロジャー・トゥイヴァサ=シェックから瞬時のリターンパスでWTB(ウイング)セヴ・リースに仕留められたように、封じるのは容易ではないようなアタックだった。

 むしろ、課題があるとすれば、後半に許した7次、6次攻撃からのトライだろう。この時間帯で消耗も影響して綻びを見せ始めた組織防御を、どう忍耐力を持ち続け、固めることができるかが、これからのテストマッチでのチャレンジポイントになる。

 もう1点、防御面で顕著な傾向があるのは、相手トライの起点だ。オールブラックスの全5トライの起点となったのはスクラムが1回、ラインアウト4回と、相手のセットプレーから失点する傾向が高い。先ほど指摘したリースのトライなどが象徴的だが、ここは相手を時間をかけて分析できるであろうW杯へ向けた対策、防御の精度アップに期待したい。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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