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体操・杉原愛子が膝に入れた3度のメス 次世代に伝えたい、怪我で「強くなれる」思考

リオデジャネイロ、東京と2度の五輪に出場した体操の杉原愛子さんは今年6月、競技生活に「一区切り」をつけ、第一線から退くことを発表した。中学時代から日本のトップレベルで戦い続けた競技人生は、華やかな経歴に彩られている一方、怪我との闘いの連続でもあった。時には手術に踏み切り、長期のリハビリを強いられる日々はアスリートにとって孤独でつらいもの。そうした“どん底”とも言える経験から、オリンピアンが得たものとは――。体操人として競技の魅力を伝えていくことを目指す杉原さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じ、世界での飛躍を期す後輩アスリートたちに向けて、自身が怪我から学んだことを明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・出口 夏奈子)

杉原愛子さんの“どん底”とも言える経験とは【写真:松橋晶子】
杉原愛子さんの“どん底”とも言える経験とは【写真:松橋晶子】

トレーナーが教えてくれたこと、大事なのは「焦る気持ちをいかに抑えられるか」

 リオデジャネイロ、東京と2度の五輪に出場した体操の杉原愛子さんは今年6月、競技生活に「一区切り」をつけ、第一線から退くことを発表した。中学時代から日本のトップレベルで戦い続けた競技人生は、華やかな経歴に彩られている一方、怪我との闘いの連続でもあった。時には手術に踏み切り、長期のリハビリを強いられる日々はアスリートにとって孤独でつらいもの。そうした“どん底”とも言える経験から、オリンピアンが得たものとは――。体操人として競技の魅力を伝えていくことを目指す杉原さんが「THE ANSWER」のインタビューに応じ、世界での飛躍を期す後輩アスリートたちに向けて、自身が怪我から学んだことを明かした。(取材・文=THE ANSWER編集部・出口 夏奈子)

【前編】歴史に名を刻んだ思い出の世界体操 元女子エースが語る新技誕生物語 / 体操 杉原愛子さんインタビュー(GROWINGへ)

【後編】恩師と考えた「一区切り」という結論 先に見据える普及と指導の道 / 体操 杉原愛子さんインタビュー(GROWINGへ)

 ◇ ◇ ◇

 膝にメスを入れたのは、これで3度目だった。2021年夏の東京五輪後、杉原愛子さんは左膝の手術を受けた。すでに両膝に1度ずつメスを入れている。昨夏の怪我は練習中に負傷したというよりも、慢性的なものだったという。

「オリンピックが終わってから、9月に開催される大会に向けて新しい技の練習をしていたのですが、ちょっと膝に違和感があって、痛くて練習できなかったんです。以前、膝を怪我した時と同じような違和感だったので、手術を決断しました」

 体操はその競技の特性上、両足着地や高い柔軟性が求められるため、怪我のリスクが高いと言われている。杉原さん自身もこれまで幾度となく怪我を経験してきた。負傷によってトレーニングができない期間はとてもつらく、そして余計に長く感じるものだ。

「怪我をして練習ができなくて、リハビリ期間も長い時は、リハビリ自体もすごく地味なトレーニングで面白くないし、早く実戦練習に復帰したいという気持ちが強いです。でも、その気持ちをきちんと抑えて、このトレーニングを毎日継続してやれば、復帰した時に前より強くなっている。そう信じて、地味なトレーニングの中にも楽しみを探しながらリハビリ期間を過ごしています」

 大阪人らしく、もともとがポジティブな性格だ。「家族が仲良くて、比較的明るい家庭で育ったこともあって、(前向きに考えられるのは)性格的な部分も大きいと思います。それもあるけど……」と明かしてくれたのは、トレーナーからのアドバイスの影響だ。

「今、焦ったら復帰しても、また怪我につながると聞いたんです。だから地味だけど、今(リハビリ期間)が踏ん張りどころだ、と。ここを頑張れば、すぐに練習に復帰できるからと」

 トレーナーからのアドバイスがきっかけで「頑張ろう」と思えるようになった杉原さんは、リハビリ期間中の地味なトレーニングにも前向きに励んだ。その結果、「以前よりも、できなかった技ができるようになった」と成功体験を掴むことができ、怪我をしても「弱点強化の期間」だと捉えることができるようになったという。

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