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スペインの育成が“結果至上主義”にならない理由 日本と決定的に異なる才能発掘の構造

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。日本の育成現場では長らく、大会でコンスタントに結果を残す「強豪」と呼ばれるチームが存在感を発揮してきた。結果を追求する指導は時に社会問題にもなってきたが、一方、育成大国として知られるスペインではそうした“結果至上主義”は構造的に生まれないという。その背景を、バスク地方のアカデミーを例にして探った。

育成大国として知られるスペインでは“結果至上主義”が生まれない理由【写真:Getty Images】
育成大国として知られるスペインでは“結果至上主義”が生まれない理由【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:日本の育成年代と「強豪」の看板

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。日本の育成現場では長らく、大会でコンスタントに結果を残す「強豪」と呼ばれるチームが存在感を発揮してきた。結果を追求する指導は時に社会問題にもなってきたが、一方、育成大国として知られるスペインではそうした“結果至上主義”は構造的に生まれないという。その背景を、バスク地方のアカデミーを例にして探った。

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 日本サッカーの育成現場では、今も“結果至上主義”がはびこっている。大会での成績が強力な看板になる。

「あそこは強豪だから」

 そう呼ばれるようになったら、ブランド化の成功だ。

 誤解を恐れずに言えば、結果を出したクラブや学校からプロになる選手が出るのは、一つの必然だろう。指導が良いかどうか、は必ずしも問題ではない。1人の突出した選手によって、集団はどうにでも変わる。そこでの結果が白黒をつけ、ブランディング化された組織には優秀な子供たちが入り、強さのサイクルが生まれ、プロ選手も増える。

 また、育成年代では体力的に鍛え上げただけで、実は結果が出やすい。有力な運動能力の選手を集め、その肉体を極限まで鍛えたら、相手を凌駕できる。選手は、その学校やクラブが有名選手を輩出していたら、疑問を持ちながらも従う。

「これで、あの選手は育った」

 指導者に言われると、信じて全力を尽くす。一歩間違えれば、宗教的な世界だ。

 熊本、秀岳館高校で起きた“いびつな関係”は、まさにその弊害だろう。目を覆う暴力が常態化していたわけだが、学校関係者はサッカーの本質も知らず、結果だけを見ることで、何も意見できなかった。そこで、“裸の王様”が生まれた。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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