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1.5軍の世界2位フランスに敗戦 “手の内隠した”ラグビー日本代表、W杯への収穫とは

試合開始前からキック封印のゲームプランを準備か

 だが、この日のチームスタッツを見ると、日仏の比較でパス回数は206対113、ランが132対86だったのに対して、キックは14対24。初スタメンの大役を託されたSO李も、アグレッシブにパスでBK(バックス)ラインを動かし続けた。

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 W杯で決勝トーナメントを争うレベルの、いわゆる強豪国では、コーチが戦術や選手起用の意図などに関して具体的なコメントを避けるのが常識だ。チームや指導陣が何を考え、何を狙っているかを相手に察知させない、いわば情報戦の一環だが、李の試合後のコメントが1つの判断材料になった。

「今日はアタックファーストということで、キックを蹴るよりもボールを動かそう、早いコール(指示)、コミュニケーションを意識した」

 日本代表は実質、ほぼすべての練習を非公開で行っている。メディアも、チームがどのような練習に取り組んでいるかは分からない。しかし、李の言葉からも試合開始前からキック封印のゲームプランで準備してきたことは間違いない。この選択が意図することは何か――。

 1つ容易に考えられる狙いは、フランスとの最終決着と位置づけられる9日の第2戦へ向けて手の内を見せないためだ。もちろん、過去の日本戦の映像はフランスも分析している。日本のキック戦術も十分に把握しているのは明らかだ。だが、1戦目でキックをほぼ封印してきたことで、2戦目に備えるフランスに日本対策の選択肢を増やし、絞り込ませない効果はある。加えて、第1戦で日本のキック攻撃を体感できていないぶん、フランスが不慣れな対応を強いられることにもなる。

 同時に考えるべきは、14か月後に開幕するW杯を踏まえた戦略だ。前任者のエディー・ジョーンズHC時代にも、日本はアンストラクチャーな状態で戦う戦術と、しっかりボールを保持しながら戦うスタイルを使い分けて世界に挑んできた。

 今回のキックを多用せずパスで攻めたポゼッションラグビーも、目の前のフランス戦だけを意図したものではなく、来年のW杯へ向けたシミュレーションの一環と考えることもできる。フランス代表は1年前のオーストラリア遠征でも、今回と同様の若手中心のメンバーで同国代表と1勝2敗、しかも3試合すべてが3点差以内の接戦を演じている。このような実力を持ち、フィジカルでも世界屈指の相手に、パスをベースとした戦術がどこまで通用するかを試している可能性もある。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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