ツアー2勝から賞金0円に低迷 「闇」から復活へ、女子ゴルフ堀奈津佳「7年間の闘い」
ショット復調、今年3月にツアーで7年ぶりの60台
そして、昨年3月の明治安田生命レディスで3年ぶりの予選通過を果たした。その後は10戦連続で予選落ち(22年を含む)だったが、今年3月の明治安田生命レディス第2日では、ツアーで約7年ぶりの60台の「69」をマークした。それを境に流れが変わり、5月のブリヂストンレディスは、今季初のツアー予選通過で55位。ニチレイレディス初日では、7年ぶりとなるトップ10発進を果たした。
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「昨年の試合が始まる前には、プライベートのラウンドでも60台を出せるようなっていました。一時は200ヤードを切っていたドライバーのキャリーも230ヤードまで戻っていたので、『またツアーで戦えるところまで来た』という感覚はありました。現実に平均ストロークも上がってきたので、今の成績は納得できるものがあります」
井上氏の言葉通り、堀のツアーでの平均ストロークは着実に向上している。
・22年 出場4試合 73.4545
・20-21年 出場10試合 75.9966
・19年 出場5試合 78.0000
一方で井上氏は、「奈津佳は、まだまだリハビリの途中です」と言った。積み重ねによって深刻な状態からは脱しているが、今後も焦らず、「小さな目標」を立てていくという。
「予選通過を重ねて、次はトップ20、その次はトップ10という感じです。同じように苦しい時期を乗り越え、復活して優勝した(妹の)琴音プロの姿を見ているとはいえ、奈津佳の方が闇の期間が長いので、ここで焦って、何歩先の目標を立ててはダメ。まずは、次の試合で3日連続アンダーパーを一緒に目指したいです」
ニチレイレディスに続き、堀は23日から始まるアース・モンダミンカップ(千葉・カメリアヒルズCC)にも、主催者推薦で出場。キャディーは井上氏が務める。
「グリーンが小さく、得意ではなかったニチレイレディスのコースでの2日連続アンダーパーは、とても大きいです。そして、今回のコースは、奈津佳の攻撃的スタイルがフィットするグリーンのサイズ感なのでより楽しみです」
9年前の13年アース・モンダミンカップで、堀は2位に8打差の通算21アンダーで圧勝している。だが、今はコツコツと小さな目標をクリアしていことに集中。その積み重ねが、「希望の光」を明るくしていく。
■井上透(いのうえ・とおる)
1973年4月3日、神奈川・横浜市生まれ。法政二高野球部で甲子園出場を目指していたが、故障をきかっけに退部。その後、ゴルフを始め、法大2年修了後に渡米。21歳でプロゴルファーとなり、現地でゴルフ理論を学ぶ。97年からは国内初のプロコーチとして男子ツアーに帯同。佐藤信人、中嶋常幸プロ、加瀬秀樹、佐藤信人らをコーチングした。現在も成田美寿々、穴井詩、堀奈津佳、識西諭里らプロやアマ選手を指導している。11年には、早大大学院で「韓国におけるプロゴルファーの強化・育成に関する研究」の論文を発表し、最優秀論文賞を獲得。16年には、東大ゴルフ部の監督に就任した。データ分析の第一人者としても知られる。
(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)