井上尚弥の突出した「当て勘」の能力 264秒TKO生んだ“見えないパンチ”の凄さとは
徹底した反復練習で磨いた技術
この動きは井上の才能でもあるが、何よりも徹底した反復練習の賜物だろう。幼い頃から父親の井上真吾トレーナーと徹底的に基礎練習を行い、何千、何万回と徹底して基礎を反復することで技術が磨かれてきた。天才と言われる井上だが、その根底にあるのは努力の積み重ねだ。世界王者になるのに必要なのは努力か才能、どちらかと言われることが多いが、徹底してトレーニングを続ける努力も才能の一つだ。
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私も帝拳ジムで世界王者になるような選手を何人も見てきたが、強い選手は徹底して基礎練習を積み重ねていた。練習で徹底的に動きの無駄をなくしていくことで、感覚が体に染み込み、試合でも自然に打つことができる。
今後、井上が目指すのはバンタム級での4団体統一だ。一部報道では、WBO王者のポール・バトラーもこの試合に乗り気で、今年の秋頃の開催を目処に交渉を進めていくようだ。井上は「4団体統一を年内にやるならバンタム級で戦う。それが叶わなければスーパーバンタム級に上げて新たなステージで戦いたい」と話していたが、今のところはバンタム級の統一へと進んでいくことになるだろう。
しかし、フィジカルを考えればバンタム級での限界も近い。減量では10キロ以上体重を落としているとの話もある。肉体的にも精神的にも、バンタム級ではあと1試合が限度だろう。ライトフライ級からスタートした井上は、すでにバンタム級までの3階級を制覇している。ドネア戦のパフォーマンスを見ると、5階級目となるフェザー級あたりまで難なく進めるだろう。
全世界が井上に注目し、多くの現役王者からも尊敬を集めている。今後も井上の躍進に期待したい。
(木村 悠 / Yu Kimura)