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十日町とクロアチア、日韓W杯から20年続く友情 選手も感動した市民数千人の見送り

4月半ばに訪れた時のクロアチアピッチは一面雪に覆われていた【写真:宇都宮徹壱】
4月半ばに訪れた時のクロアチアピッチは一面雪に覆われていた【写真:宇都宮徹壱】

当初はW杯会場を「十日町市に作ろうというアイデアもあった」

 今回、私の取材でエスコート役をお願いしたのは2人。生まれも育ちも十日町で、新潟県サッカー協会理事の若山裕、66歳。そしてザグレブ出身のクロアチア人で、現在は十日町市教育委員会にて国際交流を担当しているスヴェン・ビエラン、34歳である。

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 若山は20年前のクロアチア代表キャンプで、ピッチ内外で中心的な役割を果たした人物。大会後もクロアチアとの文化・スポーツ交流を絶やさぬよう、現地とのパイプ役が必要と考えて白羽の矢を立てたのが、日本での留学経験のあるスヴェンであった。

「東京五輪開催が決まって、クロアチアの選手団を再び十日町に招きたいと思った時、間に入ってくれる人がいてほしかった」と若山。一方のスヴェンは「越後湯沢の風景を見た時に『すごく遠いところに来たな』って思ったんですが、十日町はそれ以上でしたね」と苦笑する。それが2017年の話。その後、日本人女性と結婚し、子供も生まれた。今ではすっかり、十日町の人間になっている。

十日町と言えば、かつては織物の産地として栄え、魚沼産コシヒカリや火焔型土器の発掘地としても知られている。観光資源には恵まれているとはいえ、世界的なスポーツイベントのキャンプ地というのは、いささかイメージの飛躍が否めない。なぜ、十日町は名乗りを挙げたのか。若山の答えは、こちらの想像の斜め上を行くものだった。

「ご覧のとおりの小さな町です。世界的なイベントを持ってこないと、インフラはじめ、さまざまなものが整っていかない、という危機感がありました。実は当初、ワールドカップの会場を十日町市に作ろうというアイデアもあったんですよ。ところが県協会に話を持っていったら、『もう新潟市に決まっているんだから、キャンプ地に手を挙げたら? 立派なホテルもあるんだし』と言われました(苦笑)」

 もしもビッグスワンが十日町に建設されていたら、県内のサッカーのある風景は大きく変わっていただろう。スタジアムは新潟市、キャンプ地は十日町市としたのは、結果としてベストの選択であった。

 ちなみに「立派なホテル」とは、バブル時代に建設された高級リゾートホテル、当間(あてま)高原リゾート・ベルナティオのこと。ナショナルチームの宿泊には申し分ないので、トレーニング用のピッチを整備すれば、キャンプ誘致は十分に可能だった。問題は、どのナショナルチームに声をかけるか──。

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宇都宮 徹壱

1966年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」を追う取材活動を展開する。W杯取材は98年フランス大会から継続中。2009年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞した『フットボールの犬 欧羅巴1999-2009』(東邦出版)のほか、『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ 目指さないクラブ』(カンゼン)、『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)など著書多数。17年から『宇都宮徹壱WM(ウェブマガジン)』を配信している。

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