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「暴力」で人は育たない 日本に未だ残る理不尽な指導が、スペインで成立しない理由

スペインの育成指導者は選手との「対話、会話」がベース

「好きなら、それでも部活を続ける」

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“やりがい搾取”のような質の悪い発想が蔓延していた。

 21世紀になって、こうした環境は改善されてきた。しかし、根絶は難しい。ハラスメント行為を受け続けてきた世代は今も指導者として残っている。

 では、世界でこうした問題は存在しないのか?

 欧州や南米では、日本や韓国のような儒教精神がないだけに、「年の差」の意識がそもそも低い。歳が2、3歳、上や下だからといって、やたらと礼を尽くすことはない。選手は監督に対しても思ったことを口にするし、意見を言う。

「対話、会話」

 それがベースだ。

 世界のサッカーを席巻するスペインの指導者は特に、対話、会話を重んじる。論理的に、意欲的に説明ができなければ、そもそも指導者として選手に認められない。「黙ってやれ!」という指導者は選手に総スカン。況や、暴力で分からせるような指導者がのさばることはできない。

 指導現場の意識がまるで違うのだ。

「スペインでは、ああだこうだ言ってくる子供を納得させるのにパワーを使う。でも日本では、ああだこうだ言ってくれるように子供を仕向けるのにパワーを使った。そこが大きな違い」

 これはスペイン人指導者が、日本で子供たちを指導した後に洩らしていた言葉だが、言い得て妙である。

 指導者の感性が違うだけでなく、子供たちの意識も違う。

 例えば、指導者がスペインの子供に「分かったか?」と問いかけた時、彼らは理解できたら「分かった」と答えるし、分からなかったら、とことん聞く。周りに分からないと思われたら嫌だ、とか、監督に嫌われたらどうしよう、という意識は薄い。しかし日本の子供に「分かったか?」と問いかけると、ほとんどが「分かった」と答えるが、それは脊髄反射的に「はい」と答えているだけだ。

 つまり、子供たちも対話、会話がスペインのように日常的ではない。大人との距離感を計りかねている。「反抗的な態度」と思われる怖さを払拭できないのだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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