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サッカー選手と「エゴ」の強さ “劇場的成功型”の本田圭佑、バルサ去った逸材との違い

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はサッカー選手と「エゴ」の強さについて、FCバルセロナを去ったギニア代表MFイライシュ・モリバと、日本代表で長年活躍した本田圭佑を例に、その善し悪しについて説いている。

日本代表で長年活躍した本田圭佑を例に見る、サッカー選手と「エゴ」について【写真:Getty Images】
日本代表で長年活躍した本田圭佑を例に見る、サッカー選手と「エゴ」について【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:評価を下げたモリバの移籍劇

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回はサッカー選手と「エゴ」の強さについて、FCバルセロナを去ったギニア代表MFイライシュ・モリバと、日本代表で長年活躍した本田圭佑を例に、その善し悪しについて説いている。

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 プロサッカー選手は合理的に生きるべきか?

 プロの世界は容赦がない。自らが生き残るために要領の良さが求められる時はあるし、飛躍のためにはしがらみを振り払ってでも前に進むべき時はある。優しすぎる選手には過酷な世界だ。

 しかし、合理性に利己主義を滲ませた瞬間、その選手は苦しむ。

 言うまでもないが、サッカーは集団スポーツである。つまり、1人ひとりがつながってグループとなり、1つのチームを形成している。独善的で、独りよがりな選手というのは信頼を得られず、孤立することになるだろう。

 自分の欲望だけに突っ走ったら、活躍も成長も望めない。

 昨年まで「次世代を担う」と注目を集めていたギニア代表MFイライシュ・モリバだが、今や「期待の若手」の1人に格下げとなっている。

 モリバはFCバルセロナの下部組織ラ・マシアで育ち、18歳で鮮やかなトップデビューを果たしている。身長185センチと体格に恵まれ、アフリカ人選手特有のパワー、バルサで鍛えた戦術やテクニックを併せ持って、「ポグバ二世」と異名を取った。2021-22シーズンの開幕に向けては、主力候補に名前が挙がっていた。

 ところがモリバは契約更新を拒み、より良い条件を求め、さっさと移籍を決めてしまった。

 自分の利益を優先した行動で、その節操のなさはモリバの評価を著しく下げた。18歳まで育ててくれた恩義あるクラブを、あっさり袖に振る。その生き方は、現場では不信感となる。「裏切り者」「非道」とは言わないまでも、「日和見主義」「金で動く選手」というレッテルが張られてしまった。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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