前園真聖、遠藤保仁らを育成 鹿児島の名将、「どげんかせんと」で極めた独自の指導論
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は高校サッカーの名門、鹿児島実業の礎を築いた名将の言葉から、各地域が持つアイデンティティと育成の関係について説いている。
連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:部活が育んだ日本サッカーの地域色
スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は高校サッカーの名門、鹿児島実業の礎を築いた名将の言葉から、各地域が持つアイデンティティと育成の関係について説いている。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
◇ ◇ ◇
かつて日本サッカーの育成は、一個の強烈なカリスマによって成り立っていた。端的に言えば、高体連のサッカー部の顧問。その個性が高校サッカーでブランド化し、次々にタレントを生み出してきた。
「考えられない」
欧州や南米の関係者にとって、それは信じられないことだ。
今や日本も主流になりつつあるが、クラブチームでの指導が世界では一般的である。学校教育の中でのサッカー指導でプロ選手を生み出すケースは非常に珍しい。いわんや、大学まで進学してサッカーを続け(大学には籍を置いていても、サッカー部所属はあまり考えられない)、プロになるなど異例だ。
しかし、日本では「部活」がサッカーを育んできた。実は、それが地域色を打ち出し、独自性にもつながったとも言われる。教育を第一とする日本の土壌に合っていた側面も間違いなくある。
そこで、「故きを温めて新しきを知る」のも一つの育成論と言える。かつてのことを持ち出すと、精神論で括られることもあるが、決して一括りにはできない。先人の知恵と努力があった。
2008年11月、筆者は鹿児島市、高台に立つ鹿児島実業高校を訪れている。桜島を一望する景色は絶景だった。「鹿実」と呼ばれたサッカー部は、高校選手権で2度の優勝を経験するなど、強豪として名を轟かせ、多くの日本を代表する選手を出すことになった。城彰二、前園真聖、遠藤保仁、松井大輔、伊野波雅彦、平瀬智行など枚挙にいとまがない。