公立中学サッカー部を次々と強化 異色の指揮官が重視する「1対1」と教師目線の信条
個人技重視の指導で選手の「責任を明確にする」
1990年の分校化により東浦和中の好人材が転校してきたことで、尾間木中は開校初年度の学校総体で初優勝を飾る。しかし、その後は2003年に学校総体の準優勝があるものの、隆盛は長続きしなかった。
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そこへ神立さんがやってきて、あっという間に成果を挙げた。
型にはまらぬ練習メソッドで独力を植えつけ、個を伸ばした。
「何より技術を大切にしています。指導方針の基本はボールを持てて両足を使える選手、ドリブルの上手な選手を育成すること。ドリブル強化は尾間木中に転勤した頃からで、マンツーマンを採用したのは20年ほど前です。抜く、抜かれるという現象と選手の力が分かりやすいじゃないですか。1対1で自分の責任を明確にするのは大切なこと、中学生はそういう年代だと思います」
尾間木中では6年間の在職中、全国大会を3度経験し、学校総体制覇が1度に準優勝が3度。14年には関東中学校大会を制し、全国中学校大会で16強入りした。新人大会も優勝1度に3位が3度、短期間で成果を挙げる腕っこきの指導者なのだ。
16年4月の人事異動で南浦和中に転勤したが、ここでもすぐに結果を出している。18年の新人大会で3位に入ると、翌年の学校総体と関東中学校大会でともに準優勝し、全国中学校大会出場。新人大会では初の頂点に立った。埼玉県中体連サッカー専門部によると、記録の残る1965年以降の学校総体で南浦和中が準優勝したのは初、新人大会制覇も67年以降では初めての出来事だった。
特有の練習法で徹底的に個を磨いていく。「リフティングから始まり、ドリブルにシュートに1対1など、大半は個を鍛えるメニューですね。両足を使いこなせるよう、ミニゲームでは利き足でのキックを禁止しています」と言う。苦手を克服し、長所をさらに向上させるのが練習の目的だと説明した。
魅力的な選手を次々に育て、Jリーグアカデミーや強豪の高校チームに送り込む。昨春はGK嶋田晄樹が鹿島アントラーズユースに加入し、U-16日本代表候補に選ばれ、FW高橋伸太朗は大宮アルディージャU18に加入。ドリブルを前面に押し出す宮城・聖和学園高の加見成司監督とは懇意で、頻繁に仙台を訪れてはドリブル談議をしているそうだ。これまでに3人が入部している。
静岡学園中(静岡)や青森山田中(青森)とは定期的に練習試合をこなし、矢板中央高(栃木)や帝京長岡高(新潟)をはじめとする強豪校のスタッフは毎年、南浦和中の視察に訪れる。