観る者の心を揺さぶった高木姉妹の絆 恩師が忘れられない2人の「真のアスリート」の姿
「THE ANSWER」は北京五輪期間中、選手や関係者の知られざるストーリー、競技の専門家解説や意外と知らない知識を紹介し、五輪を新たな“見方”で楽しむ「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」を連日掲載する。
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#80 恩師が称える高木姉妹の「精進する」共通点
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スピードスケート女子団体追い抜き(パシュート)決勝が15日に行われ、高木美帆(日体大職)、高木菜那(日本電産サンキョー)、佐藤綾乃(ANA)が出場した日本はカナダに敗れ、銀メダルとなった。最終コーナーで転倒し、金メダルを逃すことになった姉の菜那が涙を流す一方、妹の美帆はかばうコメントを残し、五輪の舞台で見せた姉妹の絆は観る者の心を揺さぶった。帯広南商業高校スケート部監督として2人を指導した東出俊一さんの言葉とともに、高みを目指し続ける高木姉妹の姿を追う。(取材・文=THE ANSWER編集部・谷沢 直也)
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「負けず嫌い」の姉と「天才少女」だった妹――。2018年平昌五輪の女子団体パシュートで見事に優勝し、夏季・冬季を通じて日本史上初となる姉妹での金メダル獲得の快挙を達成した時から、姉の高木菜那と妹の高木美帆は、あらゆる場所でそうした言葉で語られてきた。
2人が在籍した帯広南商業高校スケート部の監督として、姉妹をともに間近で見てきた東出俊一さんは、多くの人が抱くそうした印象を否定しないが、姉妹には「精進する」という共通点があったと証言する。
姉の菜那については「負けず嫌い」を「良い意味での貪欲さ」と置き換え、努力する姿は「半端じゃなかった」と振り返る。2010年バンクーバー五輪に、中学3年生だった妹の美帆が出場。“スーパー中学生”と呼ばれて全国区の知名度を得るようになった時、2歳年上の菜那は高校2年生で東出さんの指導を受けていた。
小さい頃から妹の美帆は地元で逸材と言われ、菜那は「美帆の姉」という視線を受けるたびに悔しさを力に変えてきたという。東出さんは、「同じ競技をしていて妹と常に比較される状況というのは、普通なら挫けて辞めてもおかしくない。それでも菜那がここまでの選手になれたのは、負けん気の強さはもちろん、選手として強くなりたいという貪欲な姿勢を貫いたからこそ」と、その精神的な強さを称えた。
そして妹の美帆についても、東出さんは類稀な才能があったとする一方で、「努力家の天才だった」と強調する。
「本当に抜くところがない。なんでも一生懸命にやる子だし、ネガティブなことも一切言わない。過密スケジュールの時など『そこまでしなくていいんじゃないか? たまには練習量を落としてもいいんじゃないか?』と言っても、『いや、今やっておかないといけないので』と言って、ストイックにやり続ける。勉強もそう。海外遠征の時、荷物が多いのに教科書をたくさん持っていって。飛行機での移動中に『無駄な時間を過ごしたくないから、ちょうどいいんです』と言ってきっちりとやってくる。飄々となんでもこなす子だったんです」