陸上・田中希実が持つ「強いランナー」の定義 今、明かす感動を呼んだ五輪決勝の真実

頭に描く壮大な理想像「それが自分の中の強い選手のイメージです」
母・千洋さんは北海道マラソンで2度優勝した市民ランナー。コーチを務める父・健智さんも元実業団選手だ。両親の影響で小学生の頃から走ることが身近にあり、中学から本格的に陸上を始めた。五輪は高校時代から「出られれば出たい」と思う程度。夢や目標として位置づけていたわけではなかった。
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最初に「出たい」と強く意識したのは、5000メートルの出場権が懸かっていた20年12月の日本選手権(長距離)。1500メートルはスピード持久力などを強化する一環として出場を続け、その中で獲得できた権利だった。
競技人生でずっと重きを置くのは「強くなりたい」という気持ち。当然、五輪8位入賞も最終目標ではない。ゴールはどこにあるのだろうか。
「もっと強くなりたいと言っても、自分の中で最終形態は決めていません。オリンピックでメダルを獲るんだとか、世界ランクで何位の選手になるんだとか、そういう明確なものとはまた違う。『強くなれるところまでなりたい』と思っています。
高校でも『今の自分より強くなりたい』と思っていたんですけど、結果的にオリンピックに出られるかどうかはわからない。常に今の自分より強くなりたい。それを続けられれば、いつかはオリンピックに出られるかもしれないと思っていました」
では「強いランナー」とは何なのか。抽象的ながら、頭には絵が浮かんでいた。
「タイムが速い、確実に勝つというのは、誰がどう見ても強い選手。自分もそうありたいとは思っています。でも、タイトルを獲っていなくても人の心に残る選手はいる。誰がどう見ても強い選手にもなりたいし、その中で『ただただ、速かったな』で終わるのではなく、何十年先も記憶に残る選手になりたいです。それが自分の中にある強い選手のイメージです。
その時々で記憶に残る選手はいますけど、何十年先にも残る選手となったら、やっぱり結果も明確に残しておかないといけない。日本記録もいつかは破られるものですが、有形と無形、両方でちゃんと残る選手になりたいと思っています」
まだ22歳、卒業論文の提出を終えたばかりの大学4年生。春から新社会人になる年齢だ。類まれな思考には壮大な理想像が描かれている。
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