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優れたサッカー選手が生まれる環境とは? 本田、長友、家長…切磋琢磨した集団の強さ

スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は本田圭佑、長友佑都、家長昭博らが台頭した北京五輪世代を例に、優れたタレントが輩出される環境について考察している。

2010年南アフリカW杯で日本のベスト16入りに貢献した本田圭佑(左)と長友佑都【写真:Getty Images】
2010年南アフリカW杯で日本のベスト16入りに貢献した本田圭佑(左)と長友佑都【写真:Getty Images】

連載「世界で“差を生む”サッカー育成論」:異色だった北京五輪世代の台頭

 スペインサッカーに精通し、数々のトップアスリートの生き様を描いてきたスポーツライターの小宮良之氏が、「育成論」をテーマにしたコラムを「THE ANSWER」に寄稿。世界で“差を生む”サッカー選手は、どんな指導環境や文化的背景から生まれてくるのか。今回は本田圭佑、長友佑都、家長昭博らが台頭した北京五輪世代を例に、優れたタレントが輩出される環境について考察している。

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 サッカーは集団スポーツである。つまり、本質的に陸上、水泳、ゴルフ、テニス、ボクシングのような個人スポーツとは一線を画す。個人練習や個人レッスンで上達するのは、あくまで部分的な強化であって、サッカーの本質的な核は鍛えられない。

<サッカーは集団の中で鍛えられる>

 それが真理である。

 だからこそ、「優れた選手は同じチーム、同じ世代からどっと生まれる」というのは一つの定説と言える。例えば強豪校は有力な選手が日々、切磋琢磨できる。能力が改善されるのは必然だろう。小野伸二という突出した天才を中心に、それに準じた選手がいた「黄金世代」は花開いた。

 北京五輪世代は異色だった。

「俺たち北京世代で『一番は誰だ?』となると、なかなか名前が出てこない。それこそが、俺は問題だと思う。出てこようとしないのか、出ていけないのか」

 2008年の北京五輪を前に、本田圭佑はこう語っていたことがあった。彼は常に自分と対峙し、世界を見据えていた。大会は惨敗で挫折だったが、それをともに経験した選手たちが、その後の代表の主力となってワールドカップで活躍した点は興味深い。

「圭佑とは話が合うんですよ。上昇志向が強いから、サッカーの話になると、とことん熱い。『でっかい目標を掲げて、半端ないレベルでやっていこうぜ』って話をしています。周りが聞いたら、『こいつら頭おかしいんじゃないか』っていうくらい弾けていますよ」

 そう語っていたのは、長友佑都だった。本田、長友、岡崎慎司などはまさに這い上がった世代と言えるだろう。彼らはお互いが刺激し合い、励まされるようなところがあった。五輪代表の発足当初は平山相太らがエースと目されていたが、その競争を乗り越えたことは、その後の厳しい戦いでも経験的な強さとして根付いたのだ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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