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No.1ボクサー井上尚弥の伸びしろ 試合後、記者を困惑させた言葉「まだ出せていない」

ディパエンに左ボディーを打ち込む井上(左)、一体どこまで進化するのか
ディパエンに左ボディーを打ち込む井上(左)、一体どこまで進化するのか

左アッパー3連発に7000人がどよめいた、それでも本人は「まだまだ」

 ディパエン戦の4回。磨いてきた左アッパー3連発から左ボディーを繰り出した。距離、タイミングを間違えば、相手の右が自分の空いた部分に飛んでくるハイリスクの攻撃。そもそも、体幹や下半身など強靭なフィジカルがないと実現できない。極められた職人技は7000人の観客をどよめかせた。

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 8回TKO決着。相手はパンチより重い足技もあるムエタイの経験があり、タフな上に徹底的にディフェンシブな戦略を取った。井上は「そこそこキャリアを積んだ選手があの戦い方をしたら、やっぱり難しいものがある。(タフさは)想定外。ディパエンじゃなったらジャブで倒れています」と振り返る。むしろ判定までいかなかったことが凄いことであり、井上だから8回で倒すことができた。

 リング上で何でもできる。その多彩な技術を見せつけた一方で、課題を探す努力も惜しまない。父の真吾トレーナーは「1ラウンド目の出だしに、もう少しリズミカルなリードパンチを叩いて相手をちょっと動かしたらよかった。少し見すぎて構えてしまった」と指摘。井上も「左ボディーもそこそこ打っていましたけど、やっぱり少しブロッキングやベルトラインの上からで、ヒットが浅かったのもあった」と冷静だった。

 バンタム級転向当初、早すぎるKO決着が続き「課題がわからない」と贅沢な悩みを明かしていた。今回、約24分間の試合から与えられた宿題。試合を終え、柔らかな笑みを浮かべつつ、その目はもうギラついているように見えた。

 慢心には縁がない。来年は4団体統一、スーパーバンタム級転向を視野に入れている。今、28歳。現状では「35歳で引退」と公言している。モンスターは一体どこまで進化するのだろうか。

「試合が終わってから、もっと視野を広げてやれることはあったかなとも感じました。だから、まだまだリング上で見せられる幅があるのかなって。普段の練習で体感していることが、まだ出せていない。まだまだ伸びしろを感じる部分はあった」

 いや、あとどんだけ出してくれるんだよ。敬意と困惑の念を抱きつつ、来年も楽しみにしたい。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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